◆日本は現代的な専守防衛を実践せよ

 日本がとってきた「専守防衛」戦略は、実態的には建前に過ぎなかった。アメリカのソ連壊滅戦略のうち、日本は自国周辺だけを担当するので、専守防衛のように装えたというだけのものなのだ。

 しかし、新しい軍事戦略が求められている現在、専守防衛にはふさわしい位置づけが与えられるのではないか。日本は、侵略された場合は自衛権を発動するが(1倍返し程度の反撃だ)、他国を壊滅するような10倍返し戦略はとらない。他国にも同様の戦略を採用するよう働きかけていく。これが現代的な専守防衛戦略である。

 国際秩序構築の面でも、軍事力の緊急避難的な使用は否定しないが、臆病だと批判されつつも日本がやってきた資金面の援助とか、対立する民族、宗教の仲介などが最も求められていることは、中東の現状を見れば明らかだ。

 もちろん、古い軍事戦略に縛られたアメリカや中国に囲まれている中で、この転換がスムーズに進むはずはないし、あれこれの諍いも生まれるだろう。

 だから、自衛隊を否定することはあり得ない。しかし、日本の独立と主権を守り、世界を安定化させる道は、ここにあると考える。現実に即した軍事戦略を持つ護憲派が広がってほしい。そうなれば、改憲派が改憲の理想だけを追い求め(お花畑のように)、まともな軍事戦略を打ち出せないもとで、護憲派への信頼が増していくに違いない。

【PROFILE】松竹伸幸●1955年長崎県生まれ。一橋大学卒。ジャーナリスト・編集者。かつて日本共産党政策委員会で安全保障と外交を担当する安保外交部長を務めるも、自衛隊に関する見解の相違から2006年に退職。現在は、「自衛隊を活かす会」事務局長。近著に『慰安婦問題をこれで終わらせる。』など  

※SAPIO2016年1月号

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