石原さんの受講生には、50代で英会話の勉強を始めて外国に留学をしたり60代で英検を受験したりと、大人になってから本格的に英語学習をやり直した人が複数いて受講生全体の士気を高める存在になっているという。そうして全体の英語レベルが高まっているなか、むしろ気になるのは受講者たちの英語を話す際の「発声」と「表情」であると指摘する。
「『週末は何をして過ごしたの?』という問いかけに対して、出来事を述べた後で、たとえば『I very enjoyed.』と言う人がいます。ただ、enjoyは他動詞なので本来は後ろに目的語がこないといけません。また、veryは動詞を修飾しないため、正しくは、『I enjoyed it very much.』のように表現します。こうした文法的な間違いはさておき、そう答える声がとにかく小さいのです。さらに、『楽しかった』ということを伝えたいはずなのにその表情からは楽しさがまったく伝わってきません」(石原真弓さん・以下「」内は同)
日本人が英語を喋るときに明瞭な発声ができないことがある背景には、日本語と英語を話すときの口内の筋肉の使い方が元来異なることも一つの理由だ。しかし石原さんによると、日本人は正確な英語を話そうと思うあまり萎縮した結果、せっかく習得した英語力が十分に発揮できていない部分があるというのだ。
「英語は“ツール”にすぎません。何よりもまずはっきりと元気よく話すこと。基本的な単語をおさえてしっかり伝えられたら、多少文法が正確ではなくてもコミュニケーションできたりするんです。また、文法については初めからすべて完璧に習得しようとするのではなく、まずは英会話における“肝の論点”をおさえることが大事です」
英語を学び直したい大人向けの書籍としては、「やり直し」「中学英語で~」などといったキーワードがタイトルにあがることが多く、基礎的な英語力を鍛え直すことに重点がおかれる傾向にある。中でも石原さんが推薦するのが、『プログレッシブ 大人のための英語学習辞典』(小学館)という、中学生向けの英和・和英辞典をベースに、見出し語や例文を大人向けに一部変更した“辞書”を使用する学習法だ。