「乳房と違って、脱毛は隠せません。“今の外見でこれまで通りの社会生活が送れるのか”という不安を患者さんは抱えています。当センターで受ける相談も、ウィッグについては5分くらいで、残りは職場に戻ろうか迷っているといった話になることが多いです。ほとんどの人は、“髪のない姿でこれまで通りの人間関係が築けるか”をすごく気にしています」(野澤さん)

 見た目の変化を防ぐため、必要になるウィッグだが、その種類はさまざまだ。材料は、人工毛、人毛、それらがミックスされたものがあり、カラーも明るいブラウンからブラック、金髪もある。価格帯も数千円の手軽なものから100万円を超える高級なものもある。

「1500人の乳がん患者を対象にしたアンケートで、実際に購入したウィッグで最も多かった価格帯は、5万円以下でした。次に多いのは10万円以上、3番目は5万~10万円です。ウィッグを買うお金がないと相談に来られるかたもいますが、高額な医療用ウィッグでなくても構いません。数万円でも充分、使い方次第ではおしゃれ用の1万円のものでも大丈夫。ウィッグ購入の助成金を出している自治体もあります」(野澤さん)

◆医療用ウィッグは保険対象外

 政府は2024年、「第2次がん対策推進基本計画」の目標として、“がんになっても安心して暮らせる社会の構築”や“がん患者の就労を含めた社会的な問題への対応”などを掲げた。

 しかし、医療用ウィッグは医療保険の対象外でその負担は重い。そうした状況を受けて、野澤さんが指摘する通り、各自治体は個別に助成金を出している。

 たとえば、神奈川県大和市では、対象となるウィッグを購入するためにかかった費用の9割、または3万円のいずれか低い方の額を助成。山形県長井市は、対象者1人につき、1万円もしくは購入経費の2分の1のどちらか低い方の額を助成する事業がある。

 その土地に一定期間住んでいる、他の補助金を受けていない、など自治体ごとにいくつかの条件があるが、それをクリアすれば助成してもらえるこの取り組みは、患者の負担軽減に一役買っていることは間違いない。

※女性セブン2016年1月7・14日号

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