国際情報

李登輝氏「馬英九は習近平と握手しにのこのこ出掛けただけ」

馬英九総統の行動の是非は 代表撮影/Reuters/AFLO

 2015年は中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が会談するなど、中国と台湾が接近しているようにも見える状況にある。しかし、1月に行われる総統選後の台湾について、李登輝元総統は、「中国と距離を置くことが重要」と指摘する。李登輝氏は台中関係についてどう分析しているのか。

 * * *
 昨年11月7日、66年ぶりに台中首脳会談が行われた。しかし、馬英九総統は何もわからず、自分の功績のために習近平主席と握手しにのこのこと出掛けていったにすぎない。習主席はかなり手強い相手だ。ゆえに馬総統は事前に彼がどういう人物かきちんと研究していくべきだった。

 1分半もの間、握手していたことが報じられたが、台湾の総統として言うべきことも言わずに帰ってきた。自分のことを「台湾の総統」とさえ言わなかった。一国の指導者であるならば勇気を持って言うべきことを言わなければならない。結果的に海外メディアからは「過去の人」と書かれる始末だ。

 馬総統が首脳会談でとったやり方は、非民主的かつ台湾をないがしろにするものだ。誰が自分を総統に選んだかを分かっていない(有権者の存在を忘れている)。昨年5月、総統就任7周年の記者会見で馬総統は「毎日よく眠れている」と答えていたが、私は総統在任中の12年間、毎日が闘争で一日たりとも安眠したことなどない。この8年、庶民の生活は困窮し、台湾が直面する問題もますます増えた。馬総統はそれらを検証し、対応していかなければならないのに、国家の指導者としての責任を何ら果たしていない。

 国民党は、1月16日に行われる総統選挙でも立法委員(国会議員)選挙でも、これまでにない大敗を喫する可能性がある。一昨年11月の統一地方選挙に続く大敗となれば、党勢の凋落が加速度的に進むだろう。それを立て直すためには、国民党本土派のリーダー格である王金平・立法院長が率先して、台湾の主体性を重視する本土派を中心とした「台湾国民党」に生まれ変わらせるべきだ。

 民進党の蔡英文主席は、台中関係について「現状維持」と主張しているが、民進党内からも「曖昧だ」との批判が出た。しかし、私は「現状維持」という主張が曖昧とは思わない。

 そもそも現状を維持するとはどういうことか。台湾は台湾であり、中国は中国であって、それぞれ中華民国と中華人民共和国を維持する、それこそが現状維持である。中国と距離を置いて台湾の主体性を維持し、発展し続けることが重要だ。

【PROFILE】 1923年台湾生まれ。旧制台北高校、京都帝国大学農学部で学び、戦中は志願兵として高射砲部隊に配属された。終戦後台湾大学に編入し卒業。台北市長、台湾省主席、副総統を経て1988年に総統就任。1996年、台湾初の総統直接選挙で当選し、2000年まで務める。著書に『指導者とは何か』(PHP研究所)ほか多数。

※SAPIO2016年2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン