葬儀は盛大なものから家族だけのシンプルなもの、自分らしい工夫をこらした“お別れ会”など、さまざまなスタイルが生まれている。自分のおくられ方を伝えたくて、「エンディングノート」を手にする人が多いと話すのは、NPO法人ライフ・アンド・エンディングセンター代表の須齋美智子さん。
「病院で亡くなると、すぐにご遺体を引き取り、葬儀の準備に入らなくてはいけません。悲しみにひたる間もなく手配しなくてはならない家族にとって、希望が記されたノートがあれば、とても助かります。自分のためにも、そして家族のためにも記入しておきたい項目です」(須齋さん)
葬儀の時にどんな弔辞を読んでもらいたいかを考えることは、本当は自分がどういう人生を送りたいかにつながる。
「自分で遺影を選ぶ時、みんなに覚えておいてほしい顔を選ぶといいと思います。仕事を精一杯がんばったと自負する人は、仕事中のキリリとした姿を選ぶのもいいですね」(エンディングノートに関する講座を開く、石崎公子さん)
写真を10~20枚選んで保管場所を記しておけば、家族が遺影を選ぶ助けになるほか、最近増えている、葬儀場の一角に設ける「思い出コーナー」で使用することもできる。
また、家族が困らないように“できるだけ詳しく書こう”と考えがちだが、具体的すぎる記述は、かえって混乱のもとになると、石崎さんは言う。
昨年、母親をおくったA美さん(主婦・56才)は今も後悔していることがあるという。それは葬儀の希望をあれこれ書き残した母親のために手を尽くしたものの、“祭壇をあじさいで埋め尽くして”という願いだけが叶えられなかったことだ。
「雪深い2月の葬儀でしたから。あまりに具体的な指示が多かったので、すべてを叶えてあげられなかったことが、かえって悔いとして残ってしまいました」(A美さん)
葬儀は自分のためだと考える人が多いが、おくる遺族のためのものでもある。
「身近な人が、“精一杯の見おくりができた”“希望通りにしてあげられた”と感じられれば、悲しみから立ち直るきっかけにもなります。実現可能なことを記入し、どうしたいのかは、おおまかに伝えたほうが遺族のためになります」(須齋さん)
反対に、きちんと伝えておくべきことも。葬儀社など故人が生前契約をしていても、葬儀が終わってから気がついたのでは、お金は戻ってこない。契約の有無や希望があることは、喪主や施主になる人に伝え、詳細はノートを見てもらうよう、準備しておいて。
※女性セブン2016年1月21日号