長野県軽井沢町で起きたスキーツアーバスの転落事故は、運転手2名を含む15人の死者を出し、過去30年間のバス事故で最悪のものとなった。
今回の事故の犠牲者のうち、2人の運転手を除く12人(※1名は締め切り時点で不明)が座っていた座席が明らかになっている。バスは運転手側の右側に2列、左側に2列の計4列シートで、犠牲者のうち右側には5人、左側には7人が座っていた。右側面から倒れたのにもかかわらず、左側の座席に死者が多かった。女性セブンが過去20年のバス事故を分析したところ、ある“偏り”が浮かび上がってきた。
座席を「前方左側」「前方右側」「中央左側」「中央右側」「後方」の5つに分けたとき、死者が最も多かったのは「前方左側」だった。全犠牲者のうち38%がこの位置に座っていた。次が「後方」の17%で、「前方右側」と「中央左側」が8%、最も少ないのが「中央右側」の4%となっている。「前方左側」に死者が集中する理由について、中日本自動車短大元教授の大脇澄男氏が解説する。
「いざというとき、運転手は本能的に自分の身を守ろうとして運転席の逆側、つまり助手席側(左側)を衝突させるからです。左側の最前列には、投げ出された体を止める構造物がないので、フロントガラスを突き破って車外に飛び出してしまうこともある」
一方、「後方」の危険度が2番目に高いのは、衝突が見えず、ぶつかる直前まで無防備な人が多いからだという。
「衝撃で投げ出され、前の乗客や壁、窓などに強烈に叩きつけられるケースが多いのです」(大脇氏)
では、安全なのはどの席なのか。
「ケースバイケースなのですが、まずは運転手の真後ろです。先ほど述べた通り、運転手が身を守ろうとしますからね。それ以外では、タイヤの真上がいいでしょう。振動が大きく、足元の窮屈さが気になりますが、強度面でいえば、タイヤの上というのは最も頑丈なのです。窓側か通路側かでいえば、通路側の方がベター。バスは構造上、前後より左右からの衝撃に弱いので、万一の時、窓側は危ない。右側の通路側であればなおよい」(大脇氏)
ただし、座席を問わずに欠かせないのがシートベルト。衝突時の衝撃で窓の外に投げ出されるケースは非常に多いのだという。今回の事故でも、乗客のほとんどはシートベルトをしておらず、車外に投げ出された者も多数いたという。
事故はいつどこで起きるか誰にもわからない。座る場所のリスクを知っておくことが、わずかでも生存の可能性を上げることにつながるはずだ。
※女性セブン2016年2月4日号