今の若者たちは物欲がなく、スマホ1台で1日足りるといわれるが、これは決して悪いことではない。むしろ将来の社会を敏感に感じ取り、それに合わせた生き方を選択しているようにも見える。
「マイルドヤンキー」と呼ぶそうだが、地方には地元志向が強く、中高生の頃の友人関係を持続しつつ、仲間内で早く結婚し、子供をどんどん産む若者層がいる。多くは非正規雇用で低収入だが、共働きでバイトを掛け持ちして、家族や親戚、友人の支援を受けながら、たくましく生活している。これも一つの家族の将来像かもしれない。
日本はこれまで「経済大国」という言葉に酔いしれ、背伸びをしすぎたのではないか。英国の文明論者、シューマッハーは、かつて著書『スモール・イズ・ビューティフル』のなかで、国の経済には適正規模があると主張していた。競争して際限なく量的な拡大を求めていけば、働く意味や生きる意味を見失うだけだ。適正規模を志向すれば、必然的に地域社会の再生に行き着く。
日本人の身の丈に合った社会を目指すときが来ている。
【PROFILE】1949年奈良県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学院博士課程(経済学)修了。『正義の偽装』『さらば、資本主義』(いずれも新潮新書)など著書多数。
※SAPIO2016年2月号