中国は近年、「日本は歴史を反省しない国だ」などと世界に宣伝する戦略を進めてきた。こうした戦略の先にはどのような意図があるのか。米国防総省の中国エキスパートとして、ニクソン政権時代から現在までアメリカの対中国政策に関わるマイケル・ピルズベリー氏(現・国防総省顧問)が独占インタビューに応じた。
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私は、アメリカ歴代政権が中国に対して「協調的な先進国」になるべく呼びかけてきたにもかかわらず、中国がアメリカとは対立する形で建国100年の2049年までに世界一の超大国となることをひそかに意図してきた実態を明示する書を世に問うた。
『100年のマラソン』というタイトル(日本語版は『China2049』)の本だが、その中国の真の野望は日本にとっても重大な意味を持つ。
中国の、今後5~10年間の動きは、中国が近年とってきた行動をみると、自然に予測できる。
中国の野望は、建国6年目の1955年、毛沢東により秘密裡に宣言された。毛は側近に「アメリカに追いつき、追い越すことは中国の宿命だ」と世界戦略を語り、当面の手段として当時のソ連の国家発展5か年計画を模すことを指示した。貧しく弱い当時の中国にとっては愚かにも響く野望であり、中国共産党内部でもその戦略を非現実的だとする声が少なくなかった。
しかしこの野望は、1970年代後半から最高権力者となるトウ小平にも継承された。トウは1983年、中国を訪問した当時の世界銀行総裁のA.W.クラウセン(銀行家出身のアメリカ人)に、中国が経済的に画期的な発展を果たし、先進国入りできる方法を相談した。
クラウセンは中国がGDP(国内総生産)を毎年5.5%以上、伸ばすことが最低条件だと告げた。だが貧しい後進国の状態からそのような目標を近年、実現したのは戦後の日本だけだから、日本から学ぶべきだとも伝えた。
トウ小平は部下を連れて日本を訪れ、経済成長について熱心に学んだ。日本もアメリカも、そして世界銀行も、以後の中国は経済面で共産主義を離れ、資本主義の市場経済へと進むだろうと楽観し、資本や経営や科学技術を積極的に供与し支援した。
中国側はその結果、国内経済の各主要分野で「全世界チャンピオン」に等しい強力な企業を設立し、国際的にも進出させるようになった。