国際情報

ニカラグアで12年の獄中生活を送った日本人の告白(2/4)

取材に応じる服部重次氏

 中米・ニカラグアで、身に覚えのない罪状で12年間もの獄中生活を送った日本人・服部重次氏(67歳)。再審請求中の男性の壮絶な体験談レポート第2回では、服部氏が巻き込まれたとされる「事件」がどのようなものだったかが語られる。

 * * *
 1997年4月。海産物の輸入商社と飲食店チェーンを経営していた服部重次氏(当時49歳)は、ナマコ加工場の建設予定地を視察するため、ニカラグアを訪れた。

「もともとの予定では、ニカラグアの隣国であるコスタリカに建設するはずだったのですが、直前になって、コスタリカ政府は資源保護のためにナマコを禁漁にしたのです。すると、当時、私がリサーチ業務を委嘱していた中米在住の日本人、M氏(当時69歳)から連絡がありました」

 M氏の報告は「コスタリカでは禁漁になったが、ニカラグアではナマコを採れる」というものだった。そこで服部氏は、M氏にニカラグアに事務所を設置するよう指示し、視察のために、自らもニカラグアに入った。

「M氏が見つけてきたナマコ加工場の候補地は、ニカラグア南部のリバス県にあるマルセリャ海岸でした。彼の言う通り、マルセリャ海岸には、ナマコをはじめ豊富な水産資源が確認されたので、そのまま調査を続けるように指示し、私はいったん日本に帰国しました。これが一度目のニカラグア視察で、1996年のことでした」

 服部氏は1997年4月9日に再びニカラグアに入り、4月24日、M氏の車に乗って二人でマルセリャ海岸に向かった。以下、そこで起こった「事件」について、服部氏の証言を元に再現してみよう。

 運転していたM氏が車を停めたのは、すでに8割ほど完成していたM 氏の息子が手掛けるロブスター加工場の駐車場だった。

「もともとは、私の発注したリサーチ業務によって、M氏が発見した場所ですから、M氏の息子が便乗したロブスター加工場の建物を見たときには複雑な気持ちでしたが、まずは私のナマコ加工場を建てることになる土地の全景を確認しようと思い、M氏と一緒に、周囲を見渡せる海岸沿いの丘の頂上に向かいました」

 日本とは違いニカラグアの(観光地ではない)道にはほとんど整備の手が入っておらず、丘の頂上への続く小道は荒れた登山道のような状態だったと服部氏は語る。

「海岸沿いの丘なので、場所によっては道の片方が断崖絶壁になっていたり、ジャングルの中を進むようなところもありました。私はまだしも、還暦を回ったM氏はずいぶん苦しそうな様子でしたが、小一時間ほどかけて、私たちは加工場の建設予定地を見渡せるポイントに到着しました」

 服部氏は、そこで加工場予定地の全景を10枚ほど撮影し、それからM氏とともに、来た道を戻り始めたという。

「10分ほど下ったときだったでしょうか。M氏が足を滑らせて、5メートルほど山中の斜面を転げ落ち、とっさに手を伸ばした私も引き摺られて滑落しました。幸い、二人とも怪我はなかったのですが、滑落した際にカメラを落とし、裏蓋が開いてしまいました。せっかく撮影したフィルムがダメになってしまった可能性もあるので、Mさんを引き上げた後、一度二人で麓まで下りて休憩してから、夕方になってもう一度、撮影ポイントまで登りました」

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン