「清水って本当は不器用な人間なんです」と言うのは、清水アナと同年齢で、親しい友人の元阪神タイガース選手で野球解説者の赤星憲広さん(39才)だ。
「不器用ですし、ひとりで考え込んで、自分で疲れてしまうタイプなんだとぼくは思っているんです。だから、正直ぼくにももっと頼ってほしい。ぼくができることなら力になりたいと思うんです。でも、正直頼ってくれないんです。なんでも自分でやろうとする。それも清水のすごいところだとは思うんですけどね」
取材中、清水アナは何度も自分のことを「情けない限り」「もっとしっかりしなくちゃいけない」「ぼくがダメなんですけど…」と、弱い部分をさらけ出していた。しかし一方で、清水アナの親しい人たちが愚痴ってしまうほど、彼は周囲を頼っていない。いったいどういうことなのか、清水アナ本人に聞くと、泣きそうな笑顔を浮かべてこう言った。
◆奈緒さんが残した写真には笑顔しかない
「本当は弱いくせに、やっぱりぼくはかっこつけてるってことなんでしょうね…多くの人が心配し支えてくれる。それも奈緒がいてくれたからなんですけど、ぼくは幸せ者なんだと思います」
112日間──奈緒さんがママだった日はあまりに短い。脊椎にまで転移していたため、歩くことさえつらかったはずだ。でも彼女は一度も「痛い」「つらい」と言ったことはなく、泣いたこともない。奈緒さんが残した写真には、彼女の笑顔しかないのだ。
清水アナは「息子が理解できる年齢になった時に」と、納骨はしていない。奈緒さんの前には、それらの写真も一緒に置いてあるが、息子はどんなにぐずって泣いていても、ママの前にいくとすぐに泣きやむという。
「だから奈緒は最期まで笑っていてくれたんだなぁって思うんです」
子供の成長は早い。息子は、奈緒さんが亡くなった2日後に寝返りをうった。それからハイハイして、ヨチヨチ歩きをして、今は手をつないで散歩もできる。毎朝仕事に出かけるときも、「バイバイ」と見送ってくれる。
清水アナの親によると『ten.』の始まりを伝えるオープニングの音楽が流れると、息子はテレビの前に行って清水アナを指さす。そして彼が「こんにちは」と頭を下げると、息子もテレビに向かって頭を下げるのだという。
清水アナの帰宅は、生放送終了後の夜8時頃。パパが帰ってきたのがわかると、部屋のどこにいても、猛スピードで彼に駆け寄り、抱きつくのだという。
そんな息子の成長が、清水アナはうれしくてたまらない。そして、思う。ここに奈緒がいてくれたら。奈緒も喜ぶだろうな──毎日、そんな思いの繰り返しだ。だから、清水アナは「うれしいからこそ、寂しさもある」と言う。その彼の右手はやっぱり、左手薬指のリングに重ねられていた。
※女性セブン2016年2月25日号