昨年1月には韓国の国会議員142人が日本国憲法9条をノーベル平和賞に推薦する署名に名を連ねたことが発表された。野党・新政治民主連合の元恵栄議員と与党・セヌリ党の李柱栄議員が記者会見で公表した。元、李両議員はその趣旨として「国際社会は平和憲法9条を改正しようとする日本の右傾化を懸念している。韓国には国際社会の一員として日本の憲法9条を守る責任がある」などと述べた。
これまたなんとも奇妙な話である。韓国が日本の憲法の特殊な条項を守る責任があるというのだ。
韓国では、2014年12月に「日本平和憲法9条をノーベル平和賞に推薦する韓国委員会」という組織が旗揚げしていた。座長に李洪九・元首相が就き、元最高裁長官や政官界、学界、宗教界などの著名人約50人が推薦状に署名したと発表された。詩人、作家、俳優も名を連ねていた。
この署名状には「戦争放棄と交戦権の否定を宣言し、東アジアと世界の平和のとりでの役割を果たしてきた平和憲法が存続することを願う」とし、日本側の改憲の動きを「反平和」とする記述もついていた。この運動の契機について韓国側の代表の一人は「村山富市元首相などが『韓国で推進すればどうか』と提案してきて推進することになった」と説明した。
韓国側の組織はノーベル平和賞の対象として日本側の「九条の会」と、現在も「実行委員会」の共同代表を務める女性を推薦していた。「九条の会」は作家の大江健三郎氏ら左傾の文化人たちが2004年に結成した改憲反対の民間団体だ。女性は憲法9条のノーベル平和賞受賞推薦を最初に訴え始めた人物である。受賞を「日本国民」全体よりも特定の組織や個人にしぼったほうが円滑だろうという韓国側の意図だという。
※SAPIO2016年3月号