安倍首相が心からの「お詫び(apologies)」と「反省(remorse)」を表明する相手である慰安婦は、声明文で〈数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた〉方々と定義された。

 日本文は美文調だが、外務省による英訳を改めて和訳すると、慰安婦は「計測不可能な苦痛に満ちた経験(immeasurable and painful experience)」をして、「治癒不能な肉体的および精神的な傷(incurable physical and psychological wounds)」を負ったとされ、日本文と大きくニュアンスが異なる。

 河野談話以前から使われている常套句ではあるが、こうした英文に接した外国人は、日本軍が「拷問」同然の残虐行為をしたと理解するはずだ。

 日本ではあまり報じられないが、すでに海外メディアの多くは「慰安婦40万人説」を唱え、「日本軍は処女を狙った」と断じるなど、日本を「悪魔化」している。冒頭の“新規デモ”はこうした報道に触発されたものだろう。今回の合意が新たな反日勢力を目覚めさせたのだ。

●やまおか・てっしゅう/1965年東京都生まれ。2014年、オーストラリア・ストラスフィールド市にて子供を持つ母親ら現地在住の日系人を中心にAJCN(Australia-Japan Community Network)を結成。2015年夏、同市での「慰安婦像設置」阻止に成功した。

※SAPIO2016年3月号

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