◆貨幣に依存しないスマホ経済

 こうしたフィンテックの考え方を使えば、ビジネスチャンスは大きく広がる。すでに日本は、電車や飛行機に乗る時はチケットの購入から座席指定まで、すべてスマホで可能になっている。これは「貨幣に依存しないスマホ経済」であり、全世界共通である。ということは、今後金融機関が(タクシー業界を脅かしている)“UBER的新参者”に大きく侵食される、ということを予告しているとみるべきだ。

 日本は、JR東日本の「Suica」や首都圏の私鉄・地下鉄・バス用の「PASMO」など、交通系の非接触型ICカードの普及率が非常に高く、地域別にさまざまな種類がある。さらに「Edy」「iD」「nanaco」「WAON」「QUICPay」といった電子マネーも多様だ。ヤマダ電機やビックカメラなどのポイントカードも多くの人が持っており、貨幣に近い価値を持つ。楽天スーパーポイントなどネット上のポイントも同様だ。

 野心的な企業が、ここにフィンテックの考え方を持ち込んで、すべてのICカードや電子マネー、ポイント制度、さらには生命保険や退職金も含めて互換性を持たせ、「現在の貨幣」に換算する仕組みを作れば、大きなビジネスになるだろう。

 換算するもののリスクを評価し、そのリスクに応じたアービトラージ(サヤ取り)をして一手に引き受けるのだ。リスクは規模が大きくなればなるほど薄まっていくので、この会社は巨大な“フィンテック商社”になることができる。

 あるいは、交通系の非接触型ICカードの場合、その人が、いつ、どこからどこまで乗車したかという「人の動き」を把握して、それをビジネスにつなげることができる。

 たとえば、Aさんがウィークデーは毎日B駅からC駅まで通勤していたら、C駅前のデパートがAさんのスマホに「本日は帰宅前に売り場でこの画面を提示していただければ、特別に3割引きにいたします」というようなメールを送る。個人を狙ったワントゥワン(One to One)マーケティングを展開するのだ。

 目の前で起きているフィンテックの動きだけに目を奪われることなく、その本質と「4つの原理」を頭に入れて考えれば、いくらでもビジネスチャンスは拡大する。

 そうなれば、日本銀行が発行する通貨の量に関係なくお金(と等価のもの)が動くので、経済規模は何倍にも膨らむ。言い換えれば、国家が発行する通貨を前提にしない「信用の創造」ができる時代が到来しているのだ。

※SAPIO2016年3月号

関連記事

トピックス

世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン