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常連客が「母」と慕う女将が仕切る東京・小石川の角打ち

“小石川の母”と慕われる女将(寺内光子さん)と4代目(崇さん)


『寺内酒店』の店内に入ると、左手奥に幅半間(はんげん)ほどの暖簾が下がっている。その向こうに、常連客が鰻の寝床と表現する、角打ちスペースがある。

 14年前にこの存在を知って以来、月曜から金曜までほとんど通い詰めで、“レジェンド”と呼ばれるようになった文具メーカー勤務の50代男性は語る。

「酒を買いに来て、店の奥にある冷蔵ケースを眺めていたら、暖簾の向こうからにぎやかな声が聞こえてきましてね。のぞいてみると、10人ぐらいが角打ちをしていた。何度か行くうち、お母さんが顔を覚えてくれて…。そうなったら、もうあの性格の虜になってしまいますよ」

 今では、まずはこの店の角打ちスペースで落ち着いてから、その夜のスケジュールを決めるのが習慣になっているというこの男性。会社の『寺内酒店』未体験の若手男女を連れてくることもあるのだとか。「うちの若手の多くがここによく顔を出しますが、考えてみれば男性はもちろん女性も、すべて私が最初に連れてきてますね」(同前氏)

 この夜も、レジェンドと一緒に飲みに来た20代男性も嬉しそうに話す。

「角打ちって、漫画や本でしか知らなかったんですが、初めてこの店に連れて来てもらったときは感動しました。この楽しい雰囲気は、やっぱ漫画じゃわかんないですね。酒もうまいです」

 レジェンドの草の根活動のおかげか、同店で20代から30代までの若い男女が楽しそうに飲む姿も一般的になりつつある。そして、年齢を問わずお客に喜ばれている酒が、焼酎ハイボール。

 ある常連客は言う。

「辛口だし、飲みごたえがありますよね。今の時代のニーズに会っている気がします。酒飲みが一番喜ぶ酒でしょう。私なんか、まず最初に缶のままでこれを飲みますし、グラスにあけてロックで飲んでいる人もいますよ」

“小石川の母”派もレジェンドも、「自分の方がこの酒のファン度は高いです」という顔でうまそうにゴクリ。

「1925(大正14)年創業の店で、角打ちももう57年になりました。母も本当にいいお客さんが来てくれていると喜んでいます。できればこのままの流れで続けたいですね」(崇さん)

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