彼らは風景より、自分を撮ることのほうがずっと大事なんですね。しかも1回シャッターを押すごとに画像をチェックして、納得するまで同じ場所に陣取って撮り続けます。居合わせた世界各国の観光客の皆さんは目が釘付け。その大胆なポーズと粘り強さに、驚愕の視線を向けていました。
それでも何人かのグループやカップルで写真を撮っているのは、微笑ましい光景といえなくもなかったのですが、金沢のホテルで遭遇したのは、中高年女性の超絶自撮り。
ロビーにはたっぷりとした素敵なお花が飾られていたのですが、その前で何名かが、ただひたすら一心不乱に片手を高々と上げて“カラ笑顔”。シャッターを押してはチェックをくり返しているんです。
3回くらいまでならまだわかりますよ。女性なら誰でもきれいに写りたいでしょうから。でも彼女たちのしつこさといったら、5回でも6回でも、中には10回も撮り直すかたもいます。
通りかかった人たちは皆、呆れた顔でその様子を眺めているのですが、他人の視線なんてまるでお構いなし。何かに取りつかれた“自撮り妖怪”そのものでした。もちろん、私もブログ用の写真を撮ることはあります。でも、パブリックな場で写真を撮るのはすごく恥ずかしいもの。できるだけササッと済ませるように心がけています。
今、40代後半から50代の人はかつて、「オバタリアン」と、傍若無人なオバさんたちを蔑んでいた世代。それがなぜ自分たちが中年と呼ばれる年頃になったら、すっかり恥じらいをなくしてオバタリアン化してしまうのでしょう。
「オバさんって、図々しくていや~ねぇ」と、眉をひそめていた、昭和のあの頃の気持ちを、ときどき思い出してみてはいかがでしょうか。
オバさん、万歳!
※女性セブン2016年3月10日号