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すき焼店6代目店主 「浅草は本物となんちゃってが同居」

『すき焼 ちんや』のすき焼 楓 6500円(1人前)※写真は2人前

 東京の観光地として外国人にも人気の浅草。浅草は浅草寺近辺、大衆娯楽が集まった六区、花柳界の3本柱で栄え、職人など地場産業に支えられてきた。歴史が古い印象があるが、江戸の大火事や関東大震災、戦争などで焼土と化している。1970年代にはテレビの台頭で劇場などの興業が壊滅的な被害を受けた。どん底の大不況だった。しかし、浅草は何度も甦る。『すき焼 ちんや』の6代目・住吉史彦さんは語る。

「その度に、自分達の腕とお客様の支えで一から作り直してきました。ですから、浅草には“本物”と、新しいことを 取り入れた“なんちゃって”が同居している。当店も最初は流行を追ってすき焼き屋に転身した“なんちゃって”の店。店を食べ歩き、芸に触れ、三社祭で繋が りを強め、切磋琢磨して“本物”に近づくのです」

 浅草には老舗と言われる店が多いが、住吉さんはただ年数を重ねた店ではなく、何世代も家族が通う店こそ老舗だと話す。

「近頃は肉の産地や細かい部位をうたうお店も多いですが、家族の会話には不要ですよね(笑い)。大切なのはお年寄りもお子さんもおいしく食べて喜んでくれること。ですから、手前どもの店では脂肪の融点が低く、胃にもたれない肉を選んでいます。

 肉のうまさは牛の年齢と熟成具合で決まります。ですから手前どもで扱う牛は、すべて誕生日からわかります」と住吉さん。

 通常より長く30か月程度飼育した肉を、骨付きのまま約6週間熟成。店名の『ちんや』は、江戸時代、大名や豪商に当時人気だった狆などの愛玩動物 を納めていたことに由来する。

 両親に連れられて行った店に、親になって3世代で行く…。世代を超えて通ってもらうためには本物でなければならない。しかし、なんちゃってがなければダイナミズムや変化が生まれず、飽きられてしまう。両方を兼ね備えた数少ない街が、浅草なのだ。

撮影■玉井幹郎

※女性セブン2016年3月17日号

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