2015年度から導入された「マクロ経済スライド」が、その原因だ。物価や賃金の上昇率より年金給付額の伸びは抑えられることになる。 “年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
「年金は物価や賃金に合わせて受給額が調整されます。この制度は物価や賃金の上昇率から『スライド調整率』を引いた改定率を適用して、年金額を決めるものです。
2015年度の場合、名目手取り賃金変動率(※注)2.3%に対し、スライド調整率0.9%が引かれ、実質マイナス受給になりました。この調整率は厚労省が2110年まで発表しており、2030年頃までは概ね1%前後のカットですが、その後は大きくなり1.5~1.9%のカット率が約80年間続きます。現在、夫婦合わせて25万円の年金をもらっていても、30年後の受給額は現在の価値に直すと17万円ほどに減額される計算です」
【※注/年金受給額の改訂方法に用いる手取り賃金の変動率。前年の物価変動率に3年前の実質賃金変動率、可処分所得割合の変化率を掛けて算出したもの】
※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号