国際情報

キューバ・カストロ前議長 米を翻弄した巧みな外交術

米国と国交回復したキューバ

 世の中にはおかしなことが様々なことがあるが、評論家の呉智英氏が最近おかしいと感じたことは何か。呉氏は、アメリカとキューバの外交について論じる。

 * * *
 三月二十一日、キューバを訪問したオバマ米大統領がラウル・カストロ国家評議会議長と会談した。ラウル・カストロ氏は、フィデル・カストロ前議長の弟である。会談中、オバマ氏がキューバにおける政治犯の人権問題に言及すると、カストロ氏は色を成して「政治犯だって? キューバにそんなものがいると言うならリストを出してくれ。そうしたら今夜にも全員釈放する」と反撃した。

 私はこのニュースを読んで、ああ、弟カストロはやっぱり兄カストロに一ランク落ちるな、と思った。ちょっと下手なのである。

 私の学生時代、一九六〇年代後半、キューバの社会主義に好感を持つ友人が多かった。当時、ソ連の惨状はよく知られていたが、キューバには南国特有の大らかさが感じられ、また指導者も魅力的だった。その指導者とは、兄カストロとゲバラである。

 ゲバラは既に一九六七年ボリビアでゲリラ活動中に逮捕され銃殺刑に処せられていた。こうした経歴もロマンチックで、ゲバラ人気は高かった。私より十歳年長で、しかも保守系の政治家である亀井静香氏も、ゲバラ崇拝者として知られる。

 しかし、私はゲバラに惹かれることはなかった。ロマンチックはいいが、政治的力量がないように思われたからである。一方のカストロにはそれがあるような気がした。その政治がいい政治か悪い政治かは別にしてである。換言すれば、味方にしたい人物、敵に回したくない人物、という評価である。

 私のこの直感は、その十数年後に当たった。一九八〇年前後のことだったと思う。アメリカではしきりに人権外交が称えられた。その一環として、キューバの政治犯への人権抑圧がしばしば批判された。キューバもまた、ソ連ほどではないが、反体制知識人を逮捕監禁していたのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン