『小倉昌男 祈りと経営』を上梓した森健氏
森:娘さんが、いわゆる「問題児」だとみられていたことは、業界関係者には知られていたんですね……。ただ、本書の取材でたどり着いた「事実」については、近い人も知らなかった。
この取材でおもしろかったのは、取材を始めてみると、小倉さんの話を尋ねているのに、なぜかみんな必ず小倉さんの家族の話にいってしまっていたことです。小倉さんに近い立場にいた人ほど「家族が大変だった」という話をする。つまり、最初からそのテーマを狙って取材を始めたわけではないのです。どちらかと言えば、当初福祉財団の鍵は信仰の話かなと想像していました。
ところが、自然と小倉さんが抱えていた家族の問題の方向へ促され、取材がシフトしていきました。結果として、「日経の小倉さん」とは違う姿が浮かび上がってきたわけです。
【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/1965年、福岡県生まれ。ジャーナリスト。物流業界紙『輸送経済』の記者、編集者を務めた後、1999年よりフリーランスに。著書に『仁義なき宅配』『ユニクロ帝国の光と影』などがある。
森健(もり・けん)/1968年、東京都生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学在学中からライター活動を始め、1996年よりフリーランスに。著書に『小倉昌男 祈りと経営』『「つなみ」の子どもたち』などがある。
(第2回へ続く)
■取材・構成/ツカダマスヒロ