ビジネス

ユニクロの客離れ 「値上げ」だけが原因なのか

ユニクロの「脱・安売り路線」は限界か?

 どんな商品でも、品質が良くて値段が安いに越したことはない。だが、売る側にしてみれば、採算度外視の“良品廉価”をいつまでも続けていては、ブランド価値の向上、ひいては企業の成長は見込めない。いま、そのジレンマに最も陥っているのが、カジュアル衣料品店の雄「ユニクロ」ではなかろうか。

 ユニクロを運営するファーストリテイリングが4月4日に発表した国内既存店の3月の来客数は、前年同期比8.6%減となり、2か月連続で前年水準を下回った。それ以前も決して盛況だったわけではなく、2015年6月から7か月連続で客数減に見舞われていた。

 ユニクロの客離れが鮮明になった原因として挙げられているのは、2度にわたる「値上げ」だ。消費増税のあった2014年、秋冬物の新商品について5%前後引き上げたのに続き、翌2015年にも10%程度の値上げに踏み切った。

 この間、ユニクロの商品政策にどんな変化があったのか。『ユニクロ 世界一をつかむ経営』などの著書がある流通コンサルタントの月泉博氏が解説する。

「2013年までのユニクロは、〈安い割には品質が良いから買う〉という世間一般の評価に違わず、明らかに安さが“主語”になっていましたし、事実、安さを売りにする戦略も取ってきました。

 それが2014年に入り、アベノミクスが奏功して経済のマクロトレンドがデフレからインフレぎみにパラダイムチェンジしてきたため、消費者は『多少の値上げはやむなし』と考えるようになりました。

 そんな消費者心理を巧みに汲み取ったユニクロは、価格よりも品質を重視する商品展開を進め、見事にインフレ型へと変身を果たしたのです」

 もちろん、原料高や円安といった経済環境に左右され、値上げしなければ品質は保てないという苦渋の決断があったのも確かだろう。しかし、結果的に1回目の値上げは受け入れられ、たとえ客数が落ちても客単価の上昇でカバーすることもできた。

 しかし、新たなユニクロのビジネスモデルは停滞しつつある。ここまで客数減に歯止めがかからない実情を見ると、高価格路線が敬遠されているのでは? と訝しがる声が出るのも仕方ない。前出の月泉氏もいう。

「ライバルである『しまむら』が、2016年2月期で3期ぶりとなる営業増益を見込むなど復調しているのは、愚直に低価格路線を貫いてきたからです。ファストリにとっては、ユニクロの姉妹店である安売りの『ジーユー(GU)』が好調なのも皮肉な現状といえます。

 一部大企業以外のサラリーマン給与は上がらず、財布のヒモも固いままの今、やはりカジュアル衣料の代名詞は『低価格』であって、ユニクロ商品に対しても消費者のニーズの中に適正価格や品質の基準があるのだと思います。2015年の値上げは、その上限を超えてしまったのかもしれません」

関連キーワード

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン