もちろん、妻も会社員だった場合には、妻にも厚生年金が支払われるため、赤字額はもっと少なくなる。主婦だったとして、夫に先立たれても、妻には遺族年金が支払われるため、負担はほとんどかからない。
「遺族厚生年金といって、サラリーマンの妻は、夫の厚生年金の75%を死ぬまで受け取ることができます。計算すると、月8万円程の遺族年金がもらえるケースが多く、妻自身の国民年金と合わせると、少なくとも月に13万~15万円程の収入が見込めます。
60才以上の無職単身世帯の支出は月15万円(総務省「家計調査」による)なので、夫の死後も家計は赤字になる可能性が低いです。充分生活していけるでしょう。
逆に妻が亡くなった場合、基本的に夫は妻の遺族厚生年金がもらえないので、注意が必要です」
注意すべき点はもう1つある。年金をもらえる年齢は、ほとんどの人が65才から。60才で定年退職すると、年金生活まで5年の空白期間ができてしまう。
「退職してから年金をもらうまで働かないとすると、(月27万円必要として)27万×12か月×5年間=1620万円が必要になります。
もちろんこれを退職金や貯金でまかなうこともできますが、夫婦ふたりでアルバイトなどをして月に18万円くらいの収入があれば、月の不足金額は9万円に減らすことができます。すると5年間で必要な額は540万円になります。これに、先ほど計算した65才から死ぬまでに必要な1440万円を足すと、老後資金は1980万円必要と考えることができるのです」
こうしてみると、退職してから年金受給開始までをどう過ごすかがカギになる。
会社を勤め上げた達成感で気が緩んで、だらだらと贅沢な生活をしていたら、老後の資金が減っていくばかり。65才まで会社の再雇用制度を利用したり、パートで働いて、現役時代よりは少ないながらも夫婦で収入を得ることができれば、老後も経済的不安を抱えずに過ごせる。
■夫が自営業、妻が専業主婦の場合(夫が85才、妻が95才で亡くなると仮定した場合、65才以降、いくら必要になるかを試算)
夫が自営業の場合は、厚生年金ではなく国民年金が支給される。この場合、あてにできる年金は、夫婦合わせて月11万円程度となる。また、遺族厚生年金も見込めないので、会社員のケースに比べて必要な貯蓄額はかなり多くなる。
「生活するのに月27万円必要で年金収入が11万円だとすると、月に16万円足りない。すると年192万円、20年間で3840万円不足することになります。
妻の国民年金は5万円程度。(「家計調査」によれば)夫が亡くなった後の支出は15万円なので、月に10万円不足します。夫の死後10年間で1200万円が不足します」
65~85才までの3840万円、夫の死後必要な1200万円を足すと、約5000万円の蓄えが必要になる。
もっとも、自営業には定年がないのが強みで、健康なうちは働き続ける人の方が多いだろうから、実際の不足額はもう少し低い額になるかもしれない。
※女性セブン2016年4月21日号