今以上に、当時は臓器提供が珍しい時代。大きく報道され、野田さんは“心ない声”に幾度となくつらい思いをしたという。
「当時のドナー(提供者)家族は、『あの両親は子供の臓器を売った。葬式代を出してもらった』などと報道されたりもしました。無償の愛でやっていたんですけどね。また、制度がきちんと確立していなかったことでもショックを受けました。
まだ息子がいるのに、臓器を運ぶ人が待機していて家族と鉢合わせしたり、臓器をクーラーボックスに入れて、物のように運んでいく様子を報道陣がカメラで無神経に撮ったり。とんでもないです。
物を運ぶようにしないでほしいと思いました。せめて一輪の白い花でも添えてほしいと言いました。今は、家族と運ぶ人が会うことはないし、花をつけてくれて、運ぶ場面は報道されなくなったようです」(野田さん)
野田さんは「法律を整えることも大切だけど、ドナー家族を精神面でケアする制度作りや配慮が必要」だと訴える。野田さんが噂されたような「お金」についても、
「ご提供いただく側には一切の費用もかかりませんが、謝礼も一切ありません」
と前出の下野さんは言う。
「厚生労働省からの感謝状と、提供を受けた側から感謝の気持ちをお伝えするサンクスレターが移植コーディネーターを通じて届けられます。
一方、提供を受ける側は、治療費以外に臓器の搬送費用が発生します。
臓器によって搬送方法は異なりますが、ヘリコプターや新幹線など搬送にかかった費用は実費請求されます。支払い後に申請すると7割が還付されます。ヘリの場合は一時的に高額な費用を立て替えなければいけないので、支払い方法については病院などと相談することになります」(下野さん)
※女性セブン2016年4月28日号