ちなみに婦援会による慰安婦関連の主張は、被害者側の証言を重視しすぎて客観性に欠けた部分もあり、日本側にそのまま受け入れられるとは考えがたい。
だが、少なくとも会の目的が、特定の政治的意図にもとづく「反日」活動ではないことは確かだろう。
「従来、日本国内では慰安婦問題に積極的な社民党と接触してきましたが、自民党や共産党とも話をしたい。台湾でも、私たちは国民党か民進党かを問わず女性問題を訴えていますからね」(康氏)
尖閣問題や慰安婦問題は、過去の対中・対韓関係のなかであまりにも政治化され続けてきた。ゆえに日本人の間では「反日」意識の象徴のような胡散臭いイメージを持つ人も多い。
だが、そうした先入観にとらわれると、台湾におけるこれらの問題は見えてこない。5月の蔡英文政権の発足で、日本との距離感がより縮まることが期待される隣国・台湾。柔軟な目で眺めてゆきたいものである。
●やすだ・みねとし/1982年、滋賀県生まれ。立命館大学文学部(東洋史学)卒業後、広島大学大学院文学研究科修士課程修了。在学中、中国広東省の深セン大学に交換留学。主な著書に『知中論』『境界の民』など。公式ツイッターアカウントは「@YSD0118」。
※SAPIO2016年5月号