現在の審議委員には三井住友FG元専務、トヨタ元副社長、元早大教授など錚々たる経歴の持ち主が並ぶが、安倍内閣が4月1日、新たに任命した櫻井氏は「無名といっていい人物」(大手紙経済部記者)だった。
「『サクライ・アソシエイト国際金融研究センター代表』だそうですが、全く聞いたことがなかった。エコノミストや経済学者にも『どんな金融思想の持ち主なのかよくわからない』と評されていた」(同前)
その「謎の審議委員」について、公表された経歴をもとに取材を進めると、「博士号を持っていない」という事実に突き当たったのだ。
念のため東大経済学部資料室の担当者が、博士課程にかかわる経歴の記載方法について、担当する同研究科庶務係に照会したところ、やはり「『博士課程修了』は、博士号取得済(博士論文が審査を通った)を意味する」とのことだった。東大資料室の室長代理は、こうも説明した。
「博士号を取得できなかった場合は、『単位取得退学』や『満期退学』といった言い方をします。櫻井さんはそれにあたるのでしょう。
櫻井さんが在籍した当時の人文科学系の大学院では博士号を取らないまま大学の助手になったり、就職したりするケースが多かった。他の大学で教鞭をとりながら40歳ぐらいで博士論文を書く先生も少なくありませんでした」
櫻井氏の来歴には、その他にも不可解な点がある。日銀HPによれば、櫻井氏は大学院を出た後、1976年に政府系の日本輸出入銀行(現国際協力銀行)に入行、1984年から「大蔵省財政金融研究室特別研究員」を務めたとされている。
しかし、大蔵省(財務省)の1984年の職員録を調べても同研究室の職員に櫻井氏の名前は見当たらなかった。一連の問題について日銀広報課に質問すると、こんな答えだった。
「櫻井委員は東大博士課程を単位取得退学したと聞いています。HPにも『博士号取得』とは書いていない」
※週刊ポスト2016年5月20日号