また、三菱には1990年代にRVブームに乗って販売台数を大きく伸ばした四輪駆動車「パジェロ」もある。1994年には軽規格の派生車種「パジェロミニ」を発売。累計販売台数48万台と記録的なヒットとなったものの、リコール隠しに伴う経営危機もあり、2012年6月に生産終了に追い込まれた。
「いま、軽自動車人気でスズキの『ハスラー』が売れていますが、本来なら三菱が出してもおかしくないようなクルマです。なぜなら、かつてのパジェロミニはクロスオーバーSUV(スポーツ多目的車)などと称される甘口のものではなく、本物の耐久性に優れた4WDで、多くの固定ファンがついていたからです」(井元氏)
パジェロミニについては、日産との軽自動車共同開発の過程で復活も噂されているが、今回の資本提携強化でどうなるかも注目だ。
いずれにせよ、経営の自由度が利く今のうちに「これが三菱車だ」という車種を速やかに開発できなければ、ブランド消滅が現実味を帯びてくるだろう。最後に井元氏はこんなエピソードを示して、敢えて三菱自にエールを送る。
「これまで私が出会った三菱マンの中には、気骨ある人材がたくさんいました。
机上で図面を引く設計者なのに、わざわざテストドライバーの資格を取って“三菱の走り”を追求したいと意気込んでいた開発者。待遇のよかった大手部品メーカーを辞めて三菱自で再建に意欲を燃やしていた技術者。そして、クルマの寿命が10年10万キロといわれていた時代に、30万キロ、40万キロと長く三菱車を愛して欲しいとの願いからメンテナンスに精を出すディーラーのエンジニア。
三菱ブランドに誇りを持ち、真摯に消費者と向き合う優秀な人材はまだ多く残っています。そうした人たちが委縮することなく、今こそ手を挙げて自発的に三菱らしさを取り戻してほしいです」
●撮影/横溝敦