「ブルース・ウィリスにしたって、シルベスタ・スタローン、ハリソン・フォード、リーアム・ニーソンにしてもいいお年なのにああやって立派に主演している。日本はちょっと年取るとおじいちゃん役とかにおさまってゆく。私には、それは一生無理だと思う。私にマイホームパパは難しい(笑い)」
藤岡の名前が「藤岡弘、」になったのは、1984年のことだ。「、」を加えた理由をこう言う。
「アメリカ映画に主演したときに、不退転の覚悟で、点を打った。点を打つことで、流されず、己を見つめ、修行の旅をまた一歩ずつ前進し続ける。そんな思いを込めています」
藤岡の自宅には、道場と囲炉裏のある庵が併設されている。鎧、真剣、火縄銃と本物の武具に囲まれ、もっぱら自身を見つめ直す場だというが、ときに、外国人を接待する場ともなる。庵の壁には、「思無邪」と自らの書を掲げている。邪を嫌う古風で、一徹で、純真な藤岡らしい揮毫だ。藤岡弘、の思いには、ブレがない。
「俳優には保証はないし、全力で取り組み、バタッと倒れてあの世に行ったら終わりかな。いまはとにかく命の続く限り、男のロマンを夢見ながら挑戦し、アクティブに生きていきたい。笑われようと、馬鹿にされようと、罵られようと、言いたい奴には言わせておく。諦めることなく私は我が道を行きます」
◆ふじおか・ひろし/1946年、愛媛県生まれ。1965年、松竹映画で俳優デビュー。スタントマンを使わないアクション俳優として活躍し、ドラマ『仮面ライダー』『白い牙』『特捜最前線』、映画『日本沈没』『野獣死すべし』など主演多数。NHK大河ドラマ『真田丸』には本多忠勝役で出演中。斬(真剣による演武)をはじめ、あらゆる武道に精通する武道家としても知られる。
撮影■藤岡雅樹 取材・文■一志治夫
※週刊ポスト2016年5月20日号