「銀行をいくつも回って、やっと預け先を見つけました。でも名義はぜんぶ妻。だって、自分が先に死ぬと思っていたから。とにかく必死でしたよ」

 震災から半年後、ようやく生活が落ち着き始めた清水さんは、遺族年金の申請のために年金事務所に行った。

「子供たちを育てなきゃいけないから。でも、まさか『遺族年金をもらえない』と言われると思わなかった。数週間後にもう一度行ったんだよ。でもやっぱり、同じ結果で、冷たいというか、事務的に『現時点ではそういう制度はありません』と。

 男は働いてるからダメなのか。じゃあ働かなきゃいいのかというと、そうじゃないしね。納得できないよね。でも、そう言われるなら、諦めるしかない。そればかりに構っていられない。働かなきゃいけないし、子供育てなきゃいけないから」

 清水さんは、子供たちの世話や家事などのため、平日に休める会社に転職した。給料は一気に半分に減った。

「生活は結構きつかったんですよ。いっぱいいっぱいでね。食費も切り詰めました。私は料理が作れないので、娘が頑張ってくれましたよ。女房じゃなくて、私が死ねばよかったと思ったこともあります。女房が生きていた方が、子供たちにとっていいでしょ。私は何もできない、洗濯もできないし、ご飯も作れないし。女房がいなくなった時にすごく思った。おれが代わってあげればよかったと思った。遺族年金も私が死んでいれば出ていたわけですからね」

 2014年4月に遺族年金制度が改定された今も、清水さんに受給資格はない。

※女性セブン2016年5月26日号

関連記事

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン