「銀行をいくつも回って、やっと預け先を見つけました。でも名義はぜんぶ妻。だって、自分が先に死ぬと思っていたから。とにかく必死でしたよ」

 震災から半年後、ようやく生活が落ち着き始めた清水さんは、遺族年金の申請のために年金事務所に行った。

「子供たちを育てなきゃいけないから。でも、まさか『遺族年金をもらえない』と言われると思わなかった。数週間後にもう一度行ったんだよ。でもやっぱり、同じ結果で、冷たいというか、事務的に『現時点ではそういう制度はありません』と。

 男は働いてるからダメなのか。じゃあ働かなきゃいいのかというと、そうじゃないしね。納得できないよね。でも、そう言われるなら、諦めるしかない。そればかりに構っていられない。働かなきゃいけないし、子供育てなきゃいけないから」

 清水さんは、子供たちの世話や家事などのため、平日に休める会社に転職した。給料は一気に半分に減った。

「生活は結構きつかったんですよ。いっぱいいっぱいでね。食費も切り詰めました。私は料理が作れないので、娘が頑張ってくれましたよ。女房じゃなくて、私が死ねばよかったと思ったこともあります。女房が生きていた方が、子供たちにとっていいでしょ。私は何もできない、洗濯もできないし、ご飯も作れないし。女房がいなくなった時にすごく思った。おれが代わってあげればよかったと思った。遺族年金も私が死んでいれば出ていたわけですからね」

 2014年4月に遺族年金制度が改定された今も、清水さんに受給資格はない。

※女性セブン2016年5月26日号

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