ネット依存の治療を行っている久里浜病院のサイトでは、複数のチェック項目に答えてネット依存かどうかスクリーニングする「ネット依存度テスト」が公開されている。「依存」状態として一番わかりやすい状態は、ネットと引き離されたらイライラや落ち込みを感じるかどうか。まずはスマホを一週間やめて過ごせるか試してみるといい。
同じく大きな社会問題となっているのが、親のスマホ依存によるスマホ・ネグレクトだ。
「母親がスマホに夢中になりすぎて、赤ちゃんが泣いても無視してしまう問題が起きています。0~3才の心の土台が作られる時期に、大事な親と子の感情の絆が作られないことで、人の気持ちがわからなかったり、人を操作しようとしたり、感情の抑制がきかない子供に育ってしまう。愛着障害を大量生産している状態です。子供たちの心がどんどん壊れていっています。このままいくと、日本の美徳やおもてなしの心は失われますね。
実際に幼稚園や保育園では、落ち着きがない子供や泣きやまない子供、癇癪が止まらない子供が多発的に騒いでいる状態があります。ちゃんとした養育を受けなかった子供たちが小学校に上がり始めて、これから手が付けられない学級崩壊は増えていくでしょう」
かつて、哲学者のニーチェは「1日のうち3分の2以上を自分のありたいようにある時間として使えていない人は、精神的な奴隷と同じことである。人間には自ら望んで奴隷化されたがる真性がある」と警鐘を鳴らした。ネット依存症の拡大により、今の日本はニーチェのいう“一億総家畜化”に近づいていると諸富さんは危惧する。
「ニーチェの言う精神の奴隷、つまり人が隷属したがるのは、周りに合わせている方が楽だからです。それは牛と牛が、逃げないように首輪で繋がっているのと同じこと。頻繁にネットでやりとりして、お互いに家畜になっていることを安心し合いたいんです。それをやめることは協調性がないのではなく、主体性を回復したということ。主体性のある人は、ネットの世界に長くいられないですから。ネットをすることによって、人の目を気にして縮こまる不自由な状態にわざわざ自分たちを追い込んでいるように思えますね。スマホ断薬が必要な状況にあると思います」