国際情報

大前研一氏 「北方領土問題は面積等分方式で交渉せよ」

北方領土交渉の打開策は AP/AFLO

 安倍晋三首相はロシアのプーチン大統領と北方領土問題について対話を進めているが「4島一括返還にこだわる限り、解決は不可能だ」と指摘するのは、大前研一氏だ。では、ロシアとは今後どんな交渉をしていくべきなのか。

 * * *
 ロシアは極東ロシアを持て余している。プーチン大統領は開発に力を入れているが、成果はほとんど出ていない。しかも、隣の中国は東北3省だけで人口が1億1000万人なのに対し極東ロシアは約670万人しかいないため、中国の勢力が圧倒的に強くなっている。

 すでに中国の会社や商人が続々と入り込み、マーケットで売っている商品の大半が中国製になっているため、このままいくと極東ロシアは中国の経済植民地になってしまうのではないか、という危機感がロシア人の間では募っている。今後は日本などの協力で経済発展を目指すしかないという状況だ。

 となれば、日本は早急にロシアと平和条約を結んでお互いにビザを緩和し、ビジネスでも観光でもヒト・企業・モノ・カネの行き来を活発にすべきである。それは日本にとってもロシアにとっても、極めて大きなプラスとなる。

 そして、地政学的・歴史的アプローチで考えれば、北方領土問題は「面積等分方式」で交渉することが事態打開につながることもわかる。

 これまでプーチン大統領は、中国との係争地だった大ウスリー島の面積を二等分することで国境を画定し、北極海のノルウェーとの係争海域についても二等分で40年に及ぶ境界線論争に終止符を打った。彼は面積等分方式がお気に入りなのだ。

 この歴史を踏まえて私は以前から、柔道愛好家として知られるプーチン大統領が日本に対して投げかけた「引き分け」という言葉の意図は、北方領土の面積等分による決着だと分析してきた。面積等分なら、国後島、色丹島、歯舞群島と択捉島の一部が日本に戻ってくる。

 安倍首相は5月にプーチン大統領と会談した際、北方領土問題に関して「今までのアプローチとは違う新たな発想で交渉を進めないといけない」と提案したというが、これは面積等分方式を念頭に置いたものではないかと思う。

 アメリカは大統領選が終わる11月8日から新大統領が就任する来年1月20日までの70日間、真空状態になる。プーチン大統領の年末訪問はこの間隙を狙ったものであり、今度こそ本音の戦後処理を完結してもらいたい。

※SAPIO2016年7月号

関連記事

トピックス

小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《地元・横須賀では小泉進次郎氏に不安の声》“未来のファーストレディ”に見せていた献身「(滝クリのため)子どもを抱っこして相談に来た」
NEWSポストセブン
香川県を訪問された秋篠宮妃紀子さまと次女・佳子さま(2025年10月2日、撮影/JMPA)
《手話動画が話題に》「手話できる佳子さまカッコいい」“真逆”のカラーをお召しになった紀子さまとさりげなく共通カラーを入れた高度なコーディネート
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
《クロスボウ殺人》母、祖母、弟が次々と殺され…唯一生き残った叔母は矢が貫通「息子は、撃ち殺した母をリビングに引きずった」【野津英滉被告・公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《本人が最も恐れていた事態に…》「タダで行為できます」金髪美女インフルエンサー(26)、デリバリー注文のバーガー店が滞在先を暴露「軽視できません」
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”を繰り返していた前橋市・小川晶市長(時事通信フォト)
小川市長”ラブホ会議問題”の前橋市民から出る嘆き 「高崎の親戚からすんげえ笑われた」「男と女でどんな会議なんかい、ほんと恥ずかし」
NEWSポストセブン
「愛馬の日」のイベントに参加された愛子さま(2025年9月、東京・世田谷区。撮影/JMPA)
悠仁さまの成年式を機に海外メディアが相次いで“男性しか継承できない”日本の現行制度を不可解だと指摘 皇位継承から除外されている愛子さまの存在もクローズアップ 
女性セブン
自党内の混乱はおさまりそうにない(時事通信フォト)
“女安倍”高市氏に防衛省制服組が“ただならぬ警戒感”「台湾有事が現実に」「独自の国家観をもつ軍事フリークは面倒」、進次郎氏を推す意外な声も「実力不足の方がいい」
NEWSポストセブン
たばこ祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《杖と車椅子で10メートルの距離を慎重に…》脳腫瘍のLUNA SEA・真矢が元モー娘。の妻と夫婦で地元祭りで“集合写真”に込めた想い
NEWSポストセブン
懲役5年が言い渡されたハッシー
《人気棋士ハッシーに懲役5年判決》何度も「殺してやる」と呟き…元妻が証言した“クワで襲われた一部始終”「今も殺される夢を見る」
NEWSポストセブン
浅香光代さんの稽古場に異変が…
《浅香光代さんの浅草豪邸から内縁夫(91)が姿を消して…》“ミッチー・サッチー騒動”発端となった稽古場が「オフィスルーム」に様変わりしていた
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
【前橋市長のモテすぎ素顔】「ドデカいタケノコもって笑顔ふりまく市長なんて他にいない」「彼女を誰が車で送るかで小競り合い」高齢者まで“メロメロ”にする小川市長の“魅力伝説”
NEWSポストセブン
関係者が語る真美子さんの「意外なドラテク」(getty image/共同通信)
《ポルシェを慣れた手つきで…》真美子さんが大谷翔平を隣に乗せて帰宅、「奥さんが運転というのは珍しい」関係者が語った“意外なドライビングテクニック”
NEWSポストセブン