山尾:私は本当に稲田さんの感想を聞きたいんです。男女合わせた平均賃金からは11万円も差があるけれど、女性だけで比較すればその差は4万円だから、まずそこを目指したらどうかという議論はあまりにひどく、多くの女性や日本の国際的な評価のためにも、稲田さんの働きかけで取り下げてほしい。
“保育は女性の仕事”とする考え方は、いろいろな仕事を性別で固定しないという世の流れに逆行します。女性の賃金が低い事実を逆手に取って4万円との目標を設定することもおかしい。女性が努力して男女共同参画を目指す流れにも反します。
稲田:まず、全平均より11万円低いという差は埋める必要があります。安倍政権が女性の賃金を目標にしたのは、実際に保育士の95%が女性というなか、まずは4万円という目標をクリアしていこうという意味。4万円を埋めたら終わりではありません。
私がすごく気になったのは、山尾さんの「男尊女卑」という表現です。女性活躍推進法案など、安倍政権は「女性が輝く社会」を実現する政策を数多く実行しています。女性が活躍することで日本を再生させる試みなのに、男尊女卑は言いすぎかなと思います。
山尾:その発言は残念です。男尊女卑という言葉はやりとりのなかで私の実感として出てきた言葉。今までほとんど使ったことがなくて、蔵からほこりを払って引っ張り出してきたんです。
11万円の差を埋めるため、いくつかのステップを切ることは認めますが、“男性はこの職業”“女性はこの仕事”と区切るようなメッセージを出すマイナスは大きい。
この対談は共通点から始まりましたが、稲田さんと私はちょっと違うなと感じる部分もあります。それは、“女性の活躍で日本を再生させる”という感覚です。私は日本のために活躍してくださいというよりは、1人1人の人生を応援したい。結果として、経済の成長に結びつくことはあるでしょうけど。
稲田:多分、言っていることは違わないと思います。
山尾:違わない?(苦笑)
稲田:安倍政権が掲げる女性が活躍する社会は女性のためだけでなく、男性のためでもあります。男性だって、長時間労働をやめて、休みをちゃんと取って育児や趣味、地域活動などをする時間を持つことは、人生を豊かにする。そうした社会を目指すという意味では、決して違わないと思います。
【プロフィール】
稲田朋美●いなだ・ともみ/早稲田大学卒業後、1985年、弁護士となる。2005年、衆議院選挙に自民党公認で福井1区から出馬し初当選。2012年、第2次安倍内閣で、内閣府特命担当大臣(規制改革・行政改革等)に就任する。2014年から自民党の政務調査会長。
山尾志桜里●やまお・しおり/東京大学卒業後、2004年に検察官となる。2007年退官。2009年の衆議院選挙に、民主党公認で愛知7区から出馬し初当選。現在は民進党の政務調査会長。
※女性セブン2016年6月30日号