公園に隣接した住宅には横断幕が
説明会に集まったのは30人ほど。中学校に隣接する区有地は現在、防災倉庫が2つ、置かれている。木々も植わっていて、今の時期は緑が目にまぶしい。杉並区はその土地に、100人規模の保育所を作ろうとしている。
説明会は張り詰めた空気の中、始まった。まず杉並区の担当職員が「緊急対策」について説明する。質疑応答に移っても、緊迫した雰囲気は変わらない。
住民側の席から、青いチェックのシャツを着た50代くらいの男性が立ち上がった。男性は、待機児童問題の解消そのものには賛成だと語った上でこう続けた。
「しかし、こんな住宅密集地に保育園を作るには無理がある。(保育園に子供を預ける女性には)いろいろなご事情のかたもいると思うが、通勤時間を30分間延ばして待機児童の少ない地域に引っ越すなどという選択もできるはずです。住民の生活を犠牲にしてまで、なぜ杉並区のここで、その人たちに対して完全な解決策を提供しなくてはならないのでしょうか」
保育園に入りたいなら引っ越せばいい――そんな苛烈な反対の声に区側は、他の土地も探し、検討したが「ここしか適切な土地がなかった」などと説明。しかし、男性は納得しない。再び立ち上がって語気を強めた。
「周辺住民がこれだけ反対しているなかで、建設を進めるのはやめてほしい。もしここに作れなかったら、さらに児童の数が増えたら、どうするんですか? あふれかえりますよね? だったら、他の区に移っていただけばいいんじゃないですか? 区は何か権限があって、建設を進めようとしているのですか?」
別の住民からは「私もそう思います」という声が飛ぶ。区側はそれに対して、「児童福祉法第24条にあるように、保育の環境を整えることは区の責務」と回答したが、やはり今まで住んでいた住環境が変わることを受け入れられないようだった。
今度は、年配の女性が発言の機会を求め「あの場所は」と、保育所の予定地についてとうとうと語り始めた。
「植物も植えられていて、住民にとっては憩いの場になっています。それをなぜ、更地にして保育所にするのでしょう。あなたたちの家の目の前に突然、保育所が建ったらどう思いますか? 私はこれまで通り、ここで余生をゆっくり過ごしたいと思っているのに、これでは環境破壊です」