そして女性は児童の声は問題ではないとも指摘した。中学校の校庭が開放される限られた日でも、気になるのは子供の遊ぶ声ではなく、集まった親の立ち話の声だという。
「親のマナーが悪すぎます。4、5人集まっただけでもうるさいのに、100人規模となるなんて。これだけは許せません」
これに対して区は「マナーについては充分注意してもらうようにする」と返すが、納得は得られなかった。
質疑応答はその後も続き、説明会がようやく終わったときには、終了予定時刻をゆうに超え、午後8時を回っていた。
本誌はその一部始終を取材したが、久我山東原公園の説明会のときのように怒号が飛び交うことはなかった。それは第1回の説明会が大きく報じられ、反対住民に対する批判が集まった時と同じ轍を踏むまい、そんな決意の表れにも思え、より一層、解決の難しさを雄弁に語っているようにも見えた。
両者一歩も譲らないこの状況を田中区長はどう考えているのか。田中区長に問うと、反対する住民の心情は理解できると言う。こう続けた。
「憩いの場が奪われるという気持ちはわかりますし、そういうかたには申し訳ない気持ちでいっぱいです。子供の遊び場に関しては、代替の場所を確保したいと思っています。
しかし一方で、そこに認可保育所ができることは、保育園に子供を預けられず、仕事復帰したくてもできない母親にとっては、大きなプラスです。同じ地域に住む人同士、なんとか譲り合えないか。区の施設を保育所に転用することは、そう考えた末での、苦渋の決断です」
計画が明らかになったのは4月で、説明会が5月下旬~6月、8月下旬~9月には建設を開始するというスケジュールに、住民からは「あまりに拙速すぎる」との反発も根強いが、それについて田中区長はこう繰り返した。
「それは来年4月の入園を待っている560人の待機児童とその母親を切り捨てるということ。先送りはできない。だから緊急事態なんです」
反対の多い地域では事業者が決まったあと、改めて説明会を開催する予定だが、予断を許さない状況だ。
※女性セブン2016年7月7日号