ライフ

過当競争の歯科医師「ちゃんと治すと上司が怒る」

歯科医療界の驚くべき実態

 歯医者に通っていて抱く最も素朴な疑問は、“なぜ治療が延々と終わらないのか”だ。現役の歯科医で、千葉市にある稲毛エルム歯科クリニックの長尾周格(しゅうかく)院長が、驚くべき証言をする。

「何度も虫歯治療が繰り返される理由? 歯医者が虫歯をきちんと取らないまま、被せたり詰めたりしているからですよ。そんな状態で治療を繰り返すと、歯はどんどん悪くなっていく。つまり、歯医者が虫歯を作っているのです」

 長尾院長は北海道大学歯学部大学院を修了後、2003年に東京都内の大手歯科クリニック(現在は廃業)に就職した。そこで、歯科医療界の驚くべき実態を目の当たりにしたという。

「虫歯に侵襲された部分を染める『う蝕検知液』という薬液があって、これをかけると一発で虫歯の取り残しが分かります。しかし、当時の勤め先のクリニックの約20人の同僚の誰一人としてそれを使っていませんでした。虫歯の取り残しは確信犯です。他にも削ってはいけないところを削るとか、(歯)根の治療でも消毒や治療をやっていないとか、おかしなことは数え上げたらきりがなかった。

 他人はどうあれ、自分はちゃんと治したいと思うので、治療に時間や手間ヒマをかけると『長尾先生は患者をたくさん回さない』と経営者にいわれました」

 日本の保険診療は「出来高制」と呼ばれ、歯を削れば削るほど利益が上がる仕組みになっている。長尾院長が勤務していたクリニックは、歯科医の大半が歩合制。治療技術よりも、たくさん治療したか、クリニックの売り上げに貢献したかが評価され、給料につながっていた。

「売り上げの2割が歯科医の給料になるという歩合制でした。僕の年収は約1200万円くらいだったと思います」(長尾院長)

 さらに、このクリニックでは診療報酬の不正請求も行なわれていたと長尾院長は証言する。

「特に歯周病治療だと、口の中に証拠が残らないので多めに算定することが常態化していた。それをしないと、“なぜやらないのか”と批判されました。他の医院でも、同じようなことをやっているのを見てきた」

 背景には歯科医の窮状がある。かつて、歯医者は高収入の職業の代表格だったが、今は見る影もない。

 1980年代に6万人程度だった歯科医が、国策で私大歯学部が相次いで新設された結果、2014年には10万人を超えた。一方で、国民一人当たりの虫歯本数は、1987年の9.5本から2011年は3.2本と約3分の1に激減している(15~19歳のデータ)。

 虫歯の減少は喜ばしいことのはずだが、歯医者にとっては、“メシのタネ”がなくなる死活問題であり、“ワーキングプア歯科医”なる言葉も生まれた。

関連キーワード

トピックス

三浦瑠麗(本人のインスタグラムより)
《清志被告と離婚》三浦瑠麗氏、夫が抱いていた「複雑な感情」なぜこのタイミングでの“夫婦卒業”なのか 
NEWSポストセブン
オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン