さらに、歯科クリニックの数は1996年の5万9357軒から2013年には6万8701軒となり、コンビニ(約5万1000軒)よりも多くなったが、日本の歯科全体の診療報酬は横ばいで推移している(2兆5430億円→2兆7368億円)。限られたパイを奪い合う“ゼロサムゲーム”状態が続き、倒産するクリニックが後を絶たない。
「歯科医が供給過多の状況下で、駅前の夜間営業に進出するなど患者の奪い合いが進んでいます。今年2月には、歯科医院を経営する秀真会(東京・調布市)が、負債総額5億8000万円で倒産しました」(帝国データバンク・阿部成伸副課長)
歯医者の凋落は、歯科大、歯学部の動向からもわかる。大学の中で最も学費が高い私立歯科大は6年間で約3000万円が必要とされてきた。かつては高い学費を払っても開業すれば元を取れていたが、高収入を得られる歯科医が一握りになると、親にとっても高い学費を出すメリットがなくなった。
そこで私立歯科大の中には、学費の大幅な値下げに踏み切るところも出てきた。松本歯科大学は6年間5000万円超と最も学費が高い歯科大(2008年度)だったが、現在は約1900万円になった。
歯科医師の国家試験の合格率を見ると、昨年度の国公立を含めた全国トップの合格率は、私立の東京歯科大で94%だが、最も低い松本歯科大学は34%だった。大手予備校の作成した偏差値データを見ると私立歯学大の半数以上が50を切っている。患者としては、歯医者を目指す学生の“質”の変化は気がかりだ。
●レポート/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2016年7月8日号