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雷が鳴りそうなら主催者は催しを中止にすべき? 弁護士見解

 6月21日から22日にかけて、インド各地で落雷による被害が相次ぎ、死者数が100人を超えた。日本でもこれから雷が多くなる季節だが、落雷事故が予見できそうな場合、イベントの主催者は催しを中止するべきか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 市民団体主催のフリーマーケットに出向いた時のこと。予報で落雷もあるとの天候だったのですが、本当に会場周辺に雷が落ちて大騒ぎに。幸いけが人は出ませんでしたが、落雷は予想されていたのですから主催者側は開催を中止するべきで、けが人が出た場合も責任を負うべきだという考え方は間違っていますか。

【回答】
 高校のサッカー大会で、落雷を受けた生徒に視力障害や両下肢機能全廃などの後遺症が残り、引率した学校と大会主催者の責任が追及された事件があります。

 高裁は責任を否定しましたが、最高裁は落雷による死傷事故は、全国で毎年5~11件発生し、毎年3~6人が死亡していると述べ、空に黒く固まった暗雲が立ち込め、雷鳴が聞こえ、雲の間で放電が起きるのが目撃されていた状況下では、雷鳴が大きくなくても落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見できたと判断しました。

 差戻し審の高裁は、試合を中止して高い柱の周りのドーナツ状である保護範囲といわれる安全地帯にしゃがませるなどの避雷措置をとれば事故は回避しえたとし、高額の賠償責任を認めました。

 しかし、この事故は課外のクラブ活動中のことで、生徒は教師の指導監督に従って行動しますので、生徒の安全を守るべき教師には事故発生の防止義務があったと解される場合です。

 ほかにも落雷の多いゴルフ場で落雷の危険が予想される場合には、プレーヤーに対して退避指示を出すべき注意義務、あるいは信義則上の安全配慮義務を負うと解するのが相当だとする下級審判決もあります。これもプレー代を払って施設を利用してもらう顧客に対する事業者の責任です。

 その一方、フリーマーケットの来場者に対する主催者の関係は、これらとだいぶ違います。落雷事故は常識があれば、その危険性はある程度見当がつきます。

 とはいえ、来場者もマーケットに関心をひかれ注意散漫になることもあるので、場内放送等で落雷注意を促すことも必要でしょうが、それ以上に中止するまでの義務はないと思います。なぜなら、行動が規制されることのないフリマですし、来場者が自分で判断して防衛しなければいけないからです。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2016年7月8日号

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