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【書評】溝口敦氏が引き出した「怪物」達の経営哲学とノウハウ

【書評】『闇経済の怪物たち グレービジネスでボロ儲けする人々』/溝口敦・著/光文社新書/740円+税

【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)

 タイトルから受ける反社会的なイメージとは裏腹。読後感は痛快かつ軽妙。すべてのビジネスに通じる鉄則が、本書から読み取れるからだろう。

 実名、仮名、イニシャルで登場する9人の「闇経済の怪物」たちは、自身の仕事に「命を賭けるほど真剣に、全力を挙げて取り組」んできた。その詳細を、グレービジネスのノウハウとともに、著者は驚くほど丹念に引き出している。

「シロとクロとの間のグラデーション(階調)」が、何層ものグレーを生み出すように、彼らの人生も多岐にわたる。「中学時代、すでにワルだった」I氏は、高校に進学せず、寿司店の小僧からスタートし、とび職、「山口組傘下K会系の組」の組員を経て、堅気の世界に戻ると、「統計学とパソコンを独力で勉強」。相場の世界で人を出し抜く「自分なりのロジック、方法を見つけ」るや、FXで「1週間で3億円」を稼ぐまでになった。

 高校中退後、パチプロからスタートした梅本健治氏(仮名)は、「デリヘルで事業の基礎を築き、今では10社以上を経営、年商10億円、200人以上の雇用」を生み出している。

 その経営哲学は、搾取ではなく信頼関係の構築という。「女の子に旦那がいようと、カレシがいようと、女の子を店に来させる」。それには相手が何を求めているかを「敏感に察知」し、「自分を好きにさせる努力をしないといけない」。得るためには、まず奉仕というわけである。まさに、営業の鉄則であろう。

“ニッチな世界”に商機を見いだす企画力と、成功するまで投げ出さない粘り強さ、そして「自分という人間を売る」ことの熱心さにおいて、ひときわ異彩を放っているのが、「ある広域団体の歴とした幹部」の熊谷正敏氏だ。

 著者が、熊谷氏をブラックではなくグレーとして取り上げているのは、その仕事ぶりによる。フランス人監督によって映画化され、カンヌ国際映画祭でも上映された熊谷氏の日常は、ビジネスに不可欠な機微を体現していて、国際的に注目されるのも、なるほどと思わせる。

※週刊ポスト2016年7月8日号

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