野菜や魚には季節がある。出荷が始まる「走り」、食べ頃の「旬」「盛り」、終盤の「名残り」などあるが、「旬」の頃に栄養価は最大、価格は最安となる。旬から名残りにかけての“最旬”食材「谷中しょうが」を楽しむコツを、家庭料理研究家の松田美智子さんが紹介する。
谷中しょうがは、葉しょうがの一種。東京都台東区谷中の名を冠しているが、江戸時代、実際に栽培されていたのは谷中本村と呼ばれた荒川区西日暮里一帯。また、台東区谷中の寺院や神社がお盆の中元品として贈ったことからも、その名が広く知れわたることになった。
日本でしょうがの栽培が始まったのは3世紀以前といわれる。中国から伝来し、『古事記』(712年編)にもしょうがや山椒を指す“はじかみ”という言葉が登場するほど、栽培の歴史は古い。
葉しょうがの一種である谷中しょうがは、根茎が小指ほどに育った若いものを、葉付きで収穫したもの。水分が多くやわらか、辛みが穏やかなので、生食に適している。
辛みの主成分、ジンゲロール(加熱でショウガオールに変化)が体を温め、発汗作用を促す。また、香り成分のシネオールやジンギベレンなどの豊富な香り成分は、食欲増進や疲労回復、健胃・解毒などを促す。強い殺菌作用があり、食中毒や下痢止めにも効果的。
選ぶ際には、葉はパリッと緑鮮やかなものを。根茎は白い部分が比較的まっすぐで、茎から根に向かってのピンク色が濃いほど、新鮮で良質だ。
下ごしらえは、葉の部分を揃えて切り、包丁で薄皮や汚れを軽くこそぐ。大きめのバットなどに水を張り、谷中しょうがを丸ごと寝かせて水分補給を。乾燥に弱く、冷蔵で傷むので、保存には不向き。
こんな谷中しょうがを使ったオススメ料理が、「豚肉巻き」だ。
【豚肉巻きの作り方】
(1)谷中しょうがは下ごしらえした後、茎を10cm残して切り揃え、下包丁を斜めに入れる。
(2)まな板にしゃぶしゃぶ用豚バラ肉を2枚、端を少し重ねて置き、塩と白こしょう各適量をふる。
(3)(2)に薄力粉を茶漉しなどを通してふる。肉の手前の部分にしょうがを斜めに置き、しゃぶしゃぶ用肉を巻きつける。一度手で握って形を整える。
(4)フライパンにごま油を熱し、(3)を巻き終わりを下にして並べおき、蓋をして両面を焼く。好みでレモンを絞っていただく。
※女性セブン2016年7月21日号