例えば秋田や新潟、石川などの日本海側は冬に大雪が降る。その間は野菜がとれませんから、代々漬け物にして野菜を保存してきたのです。塩分を多量に摂取した結果、がん罹患率の高さに繋がった可能性がある。
東京と乳がんの関係も食生活の欧米化の影響が指摘されます。これまで乳がんは欧米に多い病気でした。パンやコーヒー、肉食など、都心の食生活が一気に欧米化した結果、後を追うように東京の乳がんが増加した。日々の生活が病を招くのです」
一方、今回の「乳がんの罹患率は東京が1位」という調査結果を出生率と結びつける見方もある。ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田菜穂子院長が語る。
「妊娠中や授乳中は、通常の生理時に起こる女性ホルモンの乳腺への過剰刺激をリセットする期間になっているといわれています。その期間がなかったり、遅くなることが、乳がんのリスクを高めている可能性がある。
また、晩婚化や高齢出産化が進み、不妊治療、すなわち『女性ホルモン剤』の使用機会が増えていることも、乳がんとの関連性が疑われます。生活の都市化や現代化と乳がん発症率には密接な関係があるのではないでしょうか」
厚労省の調査によれば、2015年度の東京の出生率は1.20。全国最下位の数字である。その東京の乳がん罹患率が1位であることに、因果関係がないと、誰が言えるだろうか。
なお、鹿児島や沖縄が総じてがん罹患率が低い理由については、気温の高さや野菜摂取量などを要因に上げる声はあるが、「正確にはわからない」と専門家は口を揃える。
今回の調査結果は、あくまで都道府県別のがん罹患率を出すにとどまり、数字の深い分析はこれからだ。
がんと地域格差のさらなる実態解明に向け、最も期待されているのが、2016年1月から開始された「全国がん登録」。日本でがんと診断された全ての患者のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する画期的な仕組みである。
国立がん研究センターによれば、早ければ2018年にも「全国がん登録」を基にした、最新のがん罹患率を公表する予定だという。
※女性セブン2016年7月21日号