さらに金属アレルギーは、頭痛、肩凝り、めまい、怠感などを引き起こしているという説もある。アレルギー患者の大半は女性だが、中高年の男性も少なくない。考えられる要因は、口の中にある銀歯だと二宮院長は指摘する。
このクリニックではまず、患者がどの金属にアレルギーを持つのか特定するパッチテスト検査を行なう。日本の虫歯治療で最も多用される「銀歯」は、金、銀、パラジウム、銅、スズなどの合金。
そして入れ歯にはコバルトクロム合金、インプラントはチタンなど、実に様々な種類の金属が歯科材料として使われているのだ。
「当クリニックの患者254人を対象にしたパッチテストの集計では、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウムの順でアレルギーの陽性率が高い結果となりましたが、最近はパラジウムのアレルギーが増えています。
また、口の中に歯科金属の成分が溶出しているか調べる検査では、金銀パラジウム合金(銀歯)の金属成分が口の中に溶け出していることが明らかになっています。
治療は、基本的に口の中から金属を除去します。ただし、銀歯を一つ二つ外すだけで症状が改善することもあるので、全部を一度に外すことはない。セラミックに換えるとなると、一本10万円以上ですから」(同前)
今年4月から、アレルギー患者を対象に、CAM/CAD冠という、レジン(プラスチック素材)とセラミックのハイブリッドの義歯を保険で入れられることになった。ただし、これに対応出来るクリニックは限られている。
前出の50代男性は、パッチテストの結果、パラジウムのアレルギー反応が確認され、銀歯を外したところアトピー性皮膚炎の症状が一気に改善した。二宮院長は、残った銀歯の処置について、経過観察するという。
●取材・文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2016年8月5日号