建前と本音がかい離しすぎて、どうしてもうまくゆかない問題がある。英国の「EU離脱投票」を見習って、日本の大問題も国民投票で決めてしまおうという『週刊ポスト』の特集から、落語家の月亭可朝がシニアの不倫を合法にすべきか否かについて発議する。
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昔の人は嫁さんしか抱かん男のことを「軽石」と呼んどったんですわ。軽石はかかとの汚れをこすって取る。“カカ(嫁)とするだけ(かかと擦るだけ)”の男をバカにしてたわけですわ。そういう昔の男からすれば、不倫のどこが悪い、という思いがあるわけや。
自慢にはならんけど、ワシは不倫絡みで逮捕されとるからね(2008年)。ワシに嫁がいて、相手にも亭主がいて、何年も付き合ってた。ところが、2日間で十数回電話して手紙を書いたらストーカー行為で逮捕や。当時、ワシは70歳やで。行き過ぎた行為やったけど、“元気ジジイ”ということで、少しくらい称えてほしかったわな。
ところが、世の中逆や。逮捕された時は、そりゃ叩かれたで。
取材でコメント求められて、「♪可朝は7年間不倫してきてその結果~警察に御用やで~♪」と『嘆きのボイン』のメロディに乗せて歌ったら、“不謹慎”やとマスコミからバッシングや。警察も世間が飛びつく事件やいうて大きく広報しまんねん。
ただ、その後、あるプロダクションの社長から「可朝さんは我々シニアの鑑や」といわれた。心の中ではそう思ってくれてた年寄りもおりましたんや。
今のシニア世代は、仕事もしてきたけど、男女の関係でもいろいろと自由に経験をしてきた。その勢いのまま気が付いたらシニアになってしもたんやから、少しくらい不倫にのめり込んでも仕方がないんと違うかな。その積極性が世の中を明るく、元気にしている面も理解してもらいたいねん。
このあいだ滋賀で年寄り相手の講演の依頼があって、主催者から「あの話をぜひしてください」といわれた。不倫の話ですわ。「年寄りやから恋愛はもう卒業したとみんな思っているけど、そんなことはないと激励してやってください」というわけや。
だから、「不倫でもええから恋愛をやりなはれ。そうすれば体の中から薬局で売ってないようなホルモンが滲み出て、若返る。それが一番の元気の素や」という話をしたんです。客席はみんなうなずいてましたわ。
65歳を超えたら不倫は合法にしたらええ。それでシニアが元気になれば、医療費だって軽減されるわけや。正面から国民に問うてもらわれへんやろか。
※週刊ポスト2016年8月5日号