直営4ホテルとは、「ホテルヨーロッパ」「ホテルアムステルダム」「フォレストヴィラ」「変なホテル」を指す。変なホテル以外はハウステンボス場内に位置する。
ホテル群の中でも、「ホテルヨーロッパ」はフラッグシップホテルの位置づけ。感じるのは重厚感とクオリティ。そして“無駄”。ゲストへサービスを提供するのはホテルの最も重要な要素であるが、反面、多様さを極めるホテル運営において合理性は重視される。
ホテルヨーロッパのロビーを埋め尽くす百合の花々、横幅たっぷりの廊下の所々に用意されたソファー、人々がまばらな時間帯のラウンジミュージック生演奏など、合理的運営からみると一見必要ない無駄の数々にも見える。
ところが、一見必要のないサービスの集合体がホテル全体の時間軸を変化させている。歩いて・止まって・少し休んでというスローな旅人、団塊世代や高齢のご夫婦が実に楽しげだ。三世代のファミリーも目立つが、品の良いおじいちゃん、おばあちゃんを見守るようなゆったり時間が流れる。
一方、パーク内にある「ホテルアムステルダム」は、躍動感とともにアミューズメントを身近に感じるホテルだ。異国情緒も満点。質感の高さはホテルヨーロッパに並ぶラグジュアリー感といえよう。ロビーを出るとすぐそこはパーク内。園内を遊び尽くしたいカップルやグループには最適だ。
また、ゆったり過ごしたいのならばコテージタイプの「フォレストヴィラ」。多彩なハウステンボスのアクティビティ。そんな日中の動から静のステイへ。そんなメリハリも旅のアクセントになる。三世代を含むファミリー層の利用に真価を発揮するホテルといえよう。
そして、直営4ホテルの中では唯一場外にあるのが「変なホテル」。スタッフの大半がロボット化されたローコストホテルであるが、昨年の開業以来、数多くのメディアに取りあげられ、その奇抜なネーミングとともにご存じの方も多いだろう。ホテルヨーロッパの“無駄”と対極をなす、徹底した合理性を追求するホテルだ。評判は上々で、今後全国展開を視野に新会社が設立される予定で、まずは愛知県と千葉県への出店が発表されている。
ゆとりの旅ならホテルヨーロッパ。パーク内の躍動感を感じるホテルアムステルダム、プライベート感重視のフォレストヴィラ。そしてローコストの変なホテル。
観光がショッピングやグルメからアクティビティへ移行していることが指摘される現代。ハウステンボスの持つポテンシャルの高さ、多彩なアクティビティは初めて訪れたゲストを驚愕させる。自ら楽しみをセレクトするハウステンボスにおいては、ホテルもまたセレクトが楽しい個性派揃いだ。
●文/瀧澤信秋(ホテル評論家)