「虫歯をわざと取り残してリピーターにした、という記述を見て、私は激怒しました。本当にいるのかもしれないけど、大半の歯医者は良心もありますし、クレームになるのが嫌だから、自分の技術と知識の及ぶ限り、ちゃんとやります。大多数の患者は銀歯で問題なく過ごしているのに、さも全部の銀歯が大問題として不安を煽るなと言いたい。
私が以前に勤務した大手の歯科医院では、(セラミックなどの)自費率を高めて、患者さんもハッピー、自分もハッピーになりなさいと言われました。それは間違ってないと思っています。患者に対して貢献しよう、だけど儲けなきゃいけないと、歯科医は葛藤しながらやっているのが実情です」
一方の米畑氏は、出来高制の存在によって、不正な治療が各地で起きている現実を教えてくれた。
「治療の質を問わない診療報酬の出来高制では、悪いことしようと思えばいくらでもできるんです。
だから凄く悪いことをしている歯科医もいるし(※注)、一方で安い治療費、報酬の中でちゃんとした治療をしている先生も沢山います。ポストの記事は『保険診療の出来高制はあかん』みたいな感じだったんで、“おお! 言っちゃった”っていう印象。そこを指摘したのはすごいなというか、画期的でした。
【※注/8月1日には、歯科医と元巡査部長らが診療報酬を騙し取った事件で、大阪府警が新たに2人を詐欺容疑で逮捕している】
ただし、日本の診療報酬の設定金額が世界的にみて、アホみたいに安いことに触れてほしかった。自費の値段は技術料として世界的に高いわけじゃない」
※週刊ポスト2016年8月19・26日号