これまで『週刊ポスト』では、ジャーナリスト・岩澤倫彦氏による歯科治療のタブーに斬り込むシリーズ記事を度々掲載してきたが、全国の歯科医たちから賛否両論が噴出している。
そこで今回は、編集部や筆者に意見を寄せた、あるいはネット上で記事の批評を掲載していた歯科医を緊急取材。論争テーマへの率直な意見と、歯科業界の実状を本音で語ってもらった。それによって、見えてきた問題の核心とは──。
まず今回、本シリーズへの見解を聞いた歯科医を紹介する。
神奈川の長崎祥吾氏(ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長)は、文系大学を卒業してスーパーの野菜販売を担当した後、歯科医となった経歴の持ち主。
「個人的に反論させて頂きたい部分がありますので、取材をして頂けないでしょうか」というメールを筆者に寄せた。
大阪の米畑有理氏(歯の花クリニック・院長)は、削らない治療をポリシーに、自由診療を基本とした女性スタッフだけのクリニックを経営する。「あくどい歯医者ばかりではありませんが、そういうことができてしまう仕組みが悪い」と複雑な心中をブログに記した。
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本シリーズでは歯科業界の最大タブーが、日本人の口の7割に入っているといわれる銀歯であることを指摘してきた。
銀歯治療では実際の虫歯部分のみならず健康な部分も大きく削る必要性がある上、二次カリエス(治療後の歯が再び虫歯になること)を予防する目的で、隣の歯と隣接する、やはり健康な部分まで削っていた。そうした銀歯治療の理論的根拠となる「予防拡大」という概念を、本連載では明らかにしてきた。
銀歯のような健康な歯まで削る治療が、なぜ日本では主流になってきたのか?
問題の根源が、診療報酬の「出来高制」による制度設計にあると本シリーズでは指摘した。歯科医院の利益は、何度も削り、銀歯を詰めて被せて、挙げ句の果てに抜歯することで成り立っているのだ。
同時に、歯科の診療報酬自体が低く抑えられ、保険診療の歯科医院がセラミック等の自費診療の利益で経営を維持している現実も明らかにした。また、故意に虫歯を取り残し、何度も通院させる歯科治療の実態の証言を紹介したが、これに強く反発したのが、長崎氏である。