長い夏休みもそろそろ終盤。私立中学を目指す受験生にとって、9月からは模試が頻繁にあり、学校説明会に足を運ぶことも多くなるだろう。
そうした行動を起こす前に、「2016年度から中学入試に大きな変化が起きていることを知っておいたほうがいい」と話すのは、安田教育研究所代表の安田理氏だ。これまでの受験勉強では通用しない、私立中学のユニーク入試問題を解説してもらった。
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まず2016年度入試は2つの点で大きな特徴があった。一つはリーマンショック以降下がり続けていた受験者数が500名ほどだが増加したこと。受験者数が増えた背景としては、2020年から大学入試が大きく変わるとされていることが大きい。
実施面では具体的にどうなるか、未だ不透明な部分は多いが、出題の内容が「知識・技能」から「思考力・判断力・表現力」が重視される方向へ、英語が4技能必要とされる方向へ動くとされている。そうなると6年間ある中高一貫校が有利ということで、中学受験を選んだ家庭が多かったのだ。
実は大学入試改革や次期学習指導要領の検討内容(小5から英語の教科化、アクティブラーニング<受け身でなく主体的に学ぶ姿勢への転換>など)が入試そのものも大きく変えた。
英語入試、思考力テスト、ポテンシャル、リベラルアーツ、一能一芸、志、自己決定……、名称からは中身が分からない入試が急増したのだ。ひと言でいえば、「わが校は進学塾に通っていなくても受験できますよ」「わが校は教育の新しい動きをきちんと踏まえていますよ」という意思表示の入試スタイルである。
もう一つ、大学入試改革の論議を通じて旧来型の知識・技能中心の学力ではこれからのグローバル社会に対応できなくなるという学力観の変化である。思考力テストはそうした中から生まれたものと言っていいだろう。その一例を、「かえつ有明」の問題に見てみよう。
【問4】(1)「おもてなし」とは、どういうものなのか話し合ってください。(2)このグループで実際にやってみたい「おもてなし」をひとつ作ってください。できあがったら「グループのおもてなし」と書かれた紙にまとめてください。
【問5】グループで考えたおもてなしは、選手に拒否されてしまいました。(1)その理由はなぜだと考えられますか。(2)あなたは、「おもてなし」をどのようなものだと考えますか。
問3までは自分の考える「おもてなし」について聞いている。問4ではグループをつくらせ話し合わせている。中学受験であるから、初対面同士がいきなりグループをつくるわけである。さらに問5では、2020年の東京オリンピックも見据え、選手の立場で考えることを求めている。
従来だと問3まで、自分の意見を書かせることで終わっていた。初めて会った別々の小学校出身者でグループをつくらせ、相手側の立場に立つことも求めている。まさに学校がこれからのグローバル社会を生きて行くうえで必要な資質を入試でも要求しているのである。
いったい採点はどうしているのか、疑問を持たれた方もいると思う。私も、「これだとおしゃべりな女子が有利になるのではないか」と思い、学校に問い合わせてみた。
(1)他人の話をきちんと聴いているか(2)課題に即した話ができているか(3)他人の意見を踏まえて意見を言っているか(4)意見にオリジナリティーがあるか──
といったカテゴリーを事前に設定しておき、それぞれがどのレベルにあるか、という判定の仕方をしているという回答であった。