日本選手たちの活躍続く五輪を開催中のリオデジャネイロといえば、サンバのリズムに合わせて踊り明かすカーニバルに象徴されるように、いつも陽気で快活な街だ。その、夏バテ知らずのエネルギー源は「モーリョ・ヴィナグレッチ」というソースにあるらしい。『世界のお弁当 心をつなぐ味レシピ55』著者の服部直美さんが、ブラジルの元気の素の秘密にせまった。
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初の南米開催となったブラジル・リオデジャネイロオリンピック。そんなブラジルの名物料理といえば、シュラスコ。大きな鉄串に牛肉や豚肉、鶏肉、ソーセージなどを刺し、岩塩をふって、炭火でじっくり焼いた豪快な肉料理だ。もともとは、南部のガウショと呼ばれるカウボーイたちが親しんだ野外で食べる食事のスタイルで、ブラジルではシュハスコと発音するそうだ。
リオのカーニバルの激しいダンスでも有名な暑くて熱い国ブラジルでは、レストランだけでなく、家庭でも気軽に肉やソーセージを焼いて食べる。ブラジルの大きな家や、マンションなどの共同住宅には、シュハスケイラと呼ばれるレンガや石などで囲った炭火の肉焼き場が常備されているところも多く、家族や親しい友達が集まれば、いつでもシュラスコパーティーとなるそうだ。
冷たいビールと一緒にたくさんの肉を食べ、語らい、踊る陽気なブラジル人は本当にシュラスコが大好き。そんなシュラスコに絶対欠かせないというモーリョ・ヴィナグレッチという万能ソースをご存じだろうか?
モーリョ・ヴィナグレッチは、Molhoソース、Vinagrete酢で、ビネガーソースのこと。野菜とビネガーで作るこのソースは、ブラジル料理に定番の付け合わせのようなソース。シュラスコやバーベキューを食べる時には必ず用意され、他にもブラジルの国民食フェイジョアーダ(豆と肉の煮込み料理)の付け合わせにもなる。焼いた肉にかけるとさっぱりとして、いくらでも食べることができるな不思議なソースだ。色々な野菜を細かく刻んだ名脇役の万能ソースは、レストランだけでなく家庭でも色々な味があるという。
作り方もとっても簡単。トマト、玉ねぎ、パセリ、ピーマン、などの野菜を細かく切ったものに、オリーブオイル、白ワインビネガー、塩、胡椒などを加え、混ぜ合わせるだけ。家庭によっては、きゅうりやにんにく、コリアンダー、唐辛子を入れたり、ライムやレモンの果汁を加えたりする。本場ブラジルではフェイジョアーダの煮汁を入れる応用系も。他にもセロリやパプリカ、オレンジ色や黄色のトマトなど、カラフルな野菜を入れてもおいしい。その家庭に代々伝わる作り方があり、レストランでも各店で、入れる野菜も調味料も少しずつ違うので、お気に入りの味を見つけるのも楽しい。
白ワインビネガーで作れば、まろやかな味になり、酸っぱいのがお好みならば、日本の酢で代用してもいいし、リンゴ酢や他のフルーツ酢、すし酢などで作ってもおいしい。作りたては野菜のシャキシャキ感が楽しめ、少し時間が経つと、調味料と野菜から出る水分で、よりソースらしい仕上がりになる。作り方も簡単なのに、このソースさえあれば、なぜかボリュームたっぷりの肉が、口の中で肉汁とさっぱりとしたソースと合わさり、ついつい肉がすすんでしまう。
このソース、細かく刻んだ野菜がメインになるので、見た目はちょっぴり山形のだしや、メキシコのサルサソースにも似ている。しかし味は、日本でもブレイクした、酢玉ねぎに他の野菜も入って、ぐっとおいしくなった感じだ。そんなブラジル人たちの食卓に欠かせないこの万能ソースについて、管理栄養士の岡田明子さんにお話を伺った。
「日本でも、酢玉ねぎや、酢しょうがなど、今流行していますが、共通するのはクエン酸です。お酢に含まれるクエン酸は、疲労回復には欠かせないんです。このソースの材料、ビネガーはもちろんのこと、家庭によって加えるというレモン、ライムなどにもクエン酸が含まれ、夏バテで食欲不振のときや、疲れているときには、とってもいいんですよ」