もうすぐ閉会式を向かえるリオデジャネイロ五輪。事件や事故が多く治安の悪さを語るニュースが多かったが、なんとか信用回復しようと、市内の繁華街や五輪関連施設の警備は厳重だ。バハ地区にあるオリンピックパーク内へ入るには、荷物検査を含めたセキュリティチェックを受けねばならないが、いま持ち込み禁止を理由に没収されている物品の中でもっとも多い品のひとつが、自撮り棒(selfie stick)だ。
禁止項目に自撮り棒がなかったため、いつもの旅行のように持ち込もうとして没収されたのは、日本人の中年夫妻。
「旅行代理店からあらかじめもらった注意書きには、自撮り棒は持ち込めないとはありませんでした。荷物検査のところで急にカバンを開けろと言われて、自撮り棒を取り出されて、何か言われたんです。でも、ここのボランティアの人たちって、ポルトガル語しか話さない人が多いんですよ。わけがわからなくて立ち往生していたら、たまたま通りかかった日本語がわかる人が、持ち込み禁止だと教えてくれました。だったら、最初から教えてほしかった。結局、自撮り棒はそこで処分していくことになりました」
リオデジャネイロ五輪の組織委員会が明らかにしている注意事項をみると「人をたたいたりぶったりできるもの(非伸縮タイプの棒やスティックを含む)」という部分にしか stick という単語が見当たらない。もちろん自撮り棒を表す英語 selfie stickという言葉はない。
ならば持ち込めるのかと自撮り棒愛用者は考えるわけだが、セキュリティを担当する側からは、振り回すと危険な金属の棒、という解釈になるようだ。荷物検査担当のボランティアは、こう言って笑った。
「毎日毎日、ものすごい数の自撮り棒を処分しているよ。僕だけでも、オリンピックが始まってから200本は捨てていると思うよ。本当は、試合会場内での自撮りも取り締まるように言われているんだけど、自撮りする人がが多すぎて、もう放ってあるよ(笑)」
こういった地道な警備のおかげか、少なくともオリンピックパーク内では大きな事故が起きないまま、リオデジャネイロ五輪は閉幕を迎えられそうだ。