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2016.09.03 07:00  SAPIO

マンガの神様も読んだ「劇画誌の黄金時代」を亀和田武氏懐古

 三流から五流まで、エロ本業界は、それまでのメインだった実話誌を廃刊し、雪崩をうったようにエロ劇画誌の創刊に走った。四谷しんみち通り裏手にある零細出版社の社員だった私も「漫画大快楽」というエロ劇画誌を創刊した。誌名からしてフザケてるでしょ。

 自販機専門のアリス出版を、社長と18歳の事務員、そして私の3人でスタートさせたのが1976年だ。アリス出版の自販機ポルノは売れに売れた。モデルもロケ場所もストーリイもすべて自前で考えたから、売れるのも当たり前だって、ゴーマンですかね。そして書店ではなく、路地の闇に光る自販機でしか買えないから、大人も子どもも妄想を刺激され、何枚ものコインをにぎりしめ、夜の通りを徘徊した。

「劇画アリス」が世間の評判も呼び始めたとき、マンガの神様、手塚治虫さんに「カメワダくん、どこにいったら『劇画アリス』は買えるの?」と訊かれた。とにかく性を描きたい劇画家を登用する。「大快楽」で採用した方針は「劇画アリス」ではさらに徹底された。

 ある日、大人しい青年が生まれて初めて描いたという8ページの劇画を持って編集部に現れた。石井隆をずっと下手にした作品だが、暴力的でザラッとした感触が印象に残った。12ページの作品を発注したら、拙い描線だがドンピシャリの劇画ができた。青年は田口智朗といった。獨協大に在学中の田口くんは、毎月原稿を頼むうち、学校も辞めた。

 それまでは身すぎ世すぎで作られていたエロが、あたかも志願兵によって量産されたかに思えたあの時期。三流劇画と自販機ポルノは、若者文化の最尖端に躍りでた。

【榊まさる】1970年代半ばから、漫画エロトピアを中心に作品を発表。エロ劇画ブームの火付け役となった。官能表現の巧さに定評がある。

【石井 隆】劇画漫画界で活躍後、自らの作品を原作とした『天使のはらわた 赤い眩暈』で映画監督デビュー。以後、映画界に転身。最新作に『GONIN サーガ』(2015)。

【田口智朗】後に、田口トモロヲとして役者デビュー。名バイプレーヤーとして数多の作品に出演。NHKの看板番組だった 『プロジェクトX』の語りでも有名。

※SAPIO2016年9月号

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