さらにこの間、8月19日には尖閣沖の排他的経済水域(EEZ)で、中国海警局の公船が中国漁船に横付けし、漁船乗組員が公船に乗り移る現場が海上保安庁によって確認されている。日本のEEZ内で、中国が「漁業管轄権」を行使した疑いがある。
南シナ海で岩礁が次々に奪われたケースを考えれば、次なる行動は、海上民兵が起こすことになるだろう。
8月に400隻以上も襲来した中国漁船には、100人以上の海上民兵が乗っていたことが明らかになっている。彼らは軍事訓練を受けており、海警局の公船と連携を取りながら動いている。
中国の常万全・国防相も浙江省にある海上民兵の拠点を訪れて「海の人民戦争の威力を十分に発揮せよ」とハッパをかけているほどだ。
領海内で中国漁船が何らかの違法行為をして、海警局がその“取り締まり”に駆け付けるといった方法で、何らかの「法の執行」をして既成事実を作ってくることは十分考えられる。
さらに、中国の漁船が偽装事故を起こして尖閣諸島に“緊急避難”し、中国海警局がその“保護”に駆け付ける──そうすれば、上陸を許してしまうことになる。
海自や海保が24時間体制で監視に当たっているが、100人以上の海上民兵が乗った数百隻の漁船には対応できない。日本側も、「抗議する」という言葉を繰り返すだけでは中国の挑発がエスカレートする一方であることを認識し、彼らの動きを「止める」新たな方策を取る必要がある。
※SAPIO2016年10月号