ライフ

糖尿病患者数 予備軍合わせ4000万人いるとの推計も

日本の糖尿病患者はこんなに多い?

 厚生労働省が公表する「国民健康・栄養調査」(2012年)によると、右肩上がりで増え続ける糖尿病の患者数は950万人にのぼる。さらに、予備群の推計人数を合わせると2050万人で、実に成人の5人に1人という数字になる。この数字は各メディアが引用しているが、そこに異を唱える人物がいる。

「厚労省の推計データは正確とはいえません。実態はその2倍、(予備群を合わせて)4000万人はいると考えられます」

 そう語るのは福岡空港から在来線とバスを乗り継いで1時間弱、人口わずか8500人足らずの福岡県糟屋郡久山町で、ヘルスC&Cセンター長を務める清原裕氏だ。同センターは町民の健康診断の拠点となる施設で、清原氏はこの3月末まで、九州大学大学院第二内科が世界に誇る「久山町研究」のリーダーを務めてきた研究者である。

 1980年から研究に携わり、1991年からは4代目のリーダーとなった清原氏だが、当初は「教官から“2年だけ手伝って”といわれ渋々だった」と振り返る。

「内科の教室に所属している者は全員が臨床医を目指していて、疫学研究に自ら手を挙げる人はいない時代でした」

 同氏が研究に携わるようになった1980年代以降、研究チームは、様々な新データによって通説を覆し、存在感を高めていった。

 その清原氏は、冒頭で述べたように「国(厚労省)の推計する糖尿病の患者数は、実態よりも少ない」と考えている。

 久山町研究では2002年の調査における糖尿病の人の割合(有病率)は、40歳以上の男性で24%。予備群を合わせると約60%だ。たしかに国のいう「成人の5人に1人」よりも明らかに多い。

 久山町研究のほうが実態をより正確に反映していると清原氏は主張する。

「正確な有病率を調べるには受診率が大切です。普通、健診に参加する人は、もとから健康意識が高い人が多い。健康状態の悪い人やすでに病院に通っている人ほど健診に参加したがらない傾向が強いのです。そのため、受診率を70~90%まで引き上げないと健康な“優等生”に偏ってしまい、実態よりデータの数字のほうが低く出ることが多い」

 たとえば、基準値が非常に厳しいことで知られるメタボ健診(特定健康診査)の受診率はいまだ47.6%(2013年)に過ぎない。国の見ているデータが「健康意識の高い人」に偏ったものだということがよくわかる。

※週刊ポスト2016年9月16・23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト