「今回で言えば、この女子高生は“進学”という意思があったのに、それが選択できなかった。だから、相対的貧困だと思います」(原田さん)
2015年の高校生の進学率は7割に達している。また、大学・短大の進学率は過去最高だ。
「大学に入らなければ将来安定した職業に就ける確率はかなり低くなる。だから何が何でも大学へ行こうとするのです。しかし奨学金を借りて進学はしたものの、足りずにバイト漬け。テストにすら出席できず退学せざるを得ない人がたくさんいる。そして退学に追い込まれ、不安定で低収入の職にしか就けないというのが現実です」(原田さん)
貧困から脱しようと試みたもののそれも叶わず、親から子へと貧困が連鎖していくこともまた、現在の日本が抱える深刻な問題だ。前出の小西さんが貧困のイメージを調査した際、“ホームレスや飢餓寸前状態だ”と認識した人が大半だった。
「そういうイメージしか持てない人には現代の貧困、すなわち相対的貧困は理解できない。日本はここ数年でやっと『相対的貧困』という言葉が浸透してきた。今はその問題に社会が正面から向き合おうとしている過渡期の段階。理解がまだ不充分な中、この悲しいバッシングが起こってしまった」(小西さん)
貧乏人だったら貧乏人らしくしろ!──今回の炎上からは、そんな声が聞こえてくるように思えてならない。1000円のランチは食べてはいけない。食う物にも困っているのが貧乏人だからだ。当然、趣味も持ってはいけない。何もせず暗い家でじっと暮らすのが貧乏人だから。しかしそんな偏見は今すぐ捨ててほしい。
2012年、生活保護受給問題が起きた。もちろん、本来受け取るべきではない人が受け取っていた「不正受給」は解決すべき大きな問題だが一連の騒動がきっかけで「生活保護=悪」という誤った図式が世の中に強く印象づけられたことは事実だ。
その結果、生活保護を拒んで自殺した男性や、生活保護の調査を受けたことで「みじめになった」と無理心中した親子など、本来ならば生活保護をもらって生活を立て直せばもっと生きられたはずの人たちが命を落としているという現実もある。
その時と同じように、人々の無理解が今回の貧困問題に飛び火しないかが危ぶまれる。
※女性セブン2016年9月22日号